【最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、ピクサーの最新作『カーズ/クロスロード』(2017年7月15日公開)です。『カーズ』シリーズの第三弾! ワタクシ3作品とも見ていますが、本作は映像のリアル感がグーンと増し、レースシーンは「ウォオオオ!」と手に汗握りましたよ。 では物語から行ってみましょう!

【物語】

天才レースカーのライトニング・マックイーン(声:オーウェン・ウィルソン)は、最新レースカーのジャクソン・ストーム(声:アーミー・ハマー)に敗れてしまう。同世代の車たちは引退していき、マックイーンはすでに超ベテラン。「まだまだ負けない!」と迎えた最終レースですが、マックイーンは大クラッシュ! 大けがを負い、気持ちはドン底のマックイーン。

しかし、ラジエーター・スプリングスの仲間に励まされ、マックイーンは最新トレーニング施設でトレーナー車のクルーズ・ラミレス(声:クリステラ・アロンゾ)の指導のもと、再起を目指すのですが……。

【マックイーンがガチなレースの世界に帰って来た~!】

第1作目の『カーズ』で初登場したマックイーン。そのときの彼はすでにレース界のスターで、けっこう天狗でした。しかし、田舎町ラジエーター・スプリングスに迷いこんでしまったことをきっかけに、町の素朴な車たちとの交流で変わります。自己中だったマックイーンが、大人の心を持ったレースカーになったのです。

『カーズ2』は、ワールド・グランプリ中にスパイ騒動に巻き込まれるというちょっと脱線したストーリーでしたが、本作では、再びガチなレースの世界に帰ってきてくれました! 本作は第1作目の流れを組む作品なのです。

【ベテラン車マックイーンの苦悩】

もはやベテランの域のマックイーンは、本作で新しい性能の車に勝てるのかという問題を突き付けられます。簡単に抜き去られて、焦ってムキになったら転倒。マックイーンは、心も車体も凹んでしまいます。

トップを走ってきたベテランが若くて勢いのある新人に後ろからつつかれ、限界を感じる場面はアスリートの人生でよく見かけます。今回のマックイーンはそれと同じ。最新式の新しい車になろうとしても、プログラムになじめない。「もう自分は古いのか」と悩みまくるマックイーンを見ていると、こっちも胸が痛くなる……。

【思いがけない展開に驚き!】

ところが、マックイーンにはラジエーター・スプリングスの仲間がいて、優秀なトレーナーのクルーズ・ラミレスとの出会いがあり、それがマックイーンの心を癒します。クルーズはレースカーになりたかったけど夢を諦めてトレーナーになったのですが、再起を目指すマックイーンと走ることで、スピードだけがレースじゃない、挑戦することが大切だと言うことに気付くのです。

マックイーンのベテランの悩みも、クルーズの夢を諦めて違う道を選んだ過去も、自分の人生に当てはめて考える人や今後の自分に起こり得ると考える人もいそう。挑戦するマックイーンとその背中を追いかけるクルーズの関係は、人生の先輩と後輩の熱い交流のようで、ジーンとしてしまいます。

そして後半のレースシーンの迫力に手に汗握り、思いがけない展開に「え~!」みたいな。本当に気持ちよく感動と興奮をいただきました! また前2作に比べるとヴィジュアルがすごい。車体の質感など本物さながらでビックリです。

老若男女誰が見てもおもしろい『カーズ/クロスロード』。スクリーンでマックイーン達と共に人生(車生?)とレースを追体験してください。

執筆=斎藤 香 (c) Pouch

『カーズ/クロスロード』
(2017年7月15日より、TOHOシネマズ六本木ほか全国ロードショー)
監督:ブライアン・フィー
声の出演:オーウェン・ウィルソン、クリステラ・アロンゾ、アーミー・ハマー、クリス・クーパーほか
日本語吹替え版:土田大、松岡茉優、藤森慎吾、戸田恵子、赤坂泰彦、福澤朗、山口智充ほか
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▼「カーズ/クロスロード」予告編 日本版エンドソングは奥田民生「エンジン」です