日本の給食に牛乳が出るようになったのは、昭和38年頃です。古くは脱脂粉乳の時代から現在に至るまで、給食の飲み物といえば牛乳が常識。和食との相性が良いとは決して思えませんが、カルシウムを豊富に含むことから栄養バランスを考えた上で児童に飲ませるようになったという歴史があります。

日本と同様に「幼児期に牛乳を飲ませる習慣」があるイギリスでは、最近になって1日約285ミリリットルの牛乳がカルシウムの補助だけでなく「腸がん予防」もしてくれることが明らかになりました。

腸がんはイギリスにおいて1年に16000人もの命を奪う恐ろしい病気です。ところがある研究者が30~69歳の健康なボランティアと同じ年齢の腸がん患者各562名ずつを比較したところ、幼児期に数年に渡って牛乳を飲み続けた人は腸がんになりにくいということがわかったのです。幼いころに牛乳を4~6年飲み続けた人はがんになる確率が20%低く、また6年以上飲み続けた人に関してはなんと40%も危険性が削減されたのです。

長期に渡って牛乳を飲んでいた人の体内では高水準のカルシウムが形成されます。それが、腸をダメージから守るので、がんを回避することができたらしいのです。ニュージーランド・オタゴ大学のブライアンコックス教授はこの研究結果を受けて、アメリカの疫学専門誌に「調査をより進めることで、牛乳は近い将来がんのリスクを減らすことになるだろう」と話しています。

イギリスでは、5歳未満の子供たちは保育所にて1日およそ200ミリリットル弱の牛乳を無料で飲めるという「保育ミルク方式」が定められています。昨今の「鉄の男」ことディヴィッドキャメロン首相による緊縮財政案により、この法案が廃止される案が出たこともありましたが、国民の反発を受けて牛乳の無料配布は今も継続されています。

かつては小学生も牛乳を無料で飲むことができたのですが、「鉄の女」と呼ばれた当時教育相を務めていたサッチャ―が71年にこれを削減、それからというもの無料配布の対象は5歳未満の児童に制限されてしまったのです。ただし現在でも両親が全体の8割の金額を負担すれば、EU助成金を使用し小学校は安い牛乳を提供することができるそうです。

酪農協議会責任者のジュディスブライアン博士は「学校で牛乳を出すということは、子供が充分な栄養供給を約束されるという点で非常に重要なもの」と話します。1杯の牛乳は1キロのホウレンソウと同じカルシウムを含んでいます。家で毎日摂取することが困難でも学校で常に出されるのなら、育ち盛りの子供たちが確実に栄養を取ることができるのです。

しかし牛乳の驚くべき効果の一方で、高乳製品はともすると病気の可能性を助長する場合もあるという説もあります。特に日本人は欧米人と比べて腸の長さが短く、イギリス人と効果が全く同じとは断言できない面もあるのは事実。

研究を行った科学者も、腸がんリスクを減らすには牛乳を幼児期に飲み続けることと共に「大人になったら適度な運動とほどほどのアルコールで適正体重をキープすること」が重要だと述べています。どうやら大人になってしまった私たちができることは「健康的な生活を維持すること」のみなようです。
(文=田端あんじ/文責=Pouch)

screenshot:dailymail.co.uk
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