[公開直前☆最新シネマ批評]

毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

ひさびさの新作映画です。

東北太平洋沖大震災以降、映画館の休業や上映中止、マスコミ試写も一時中止がありました。被災地の皆様の健康と復興を願いつつ、エンターテインメント界はたくさんの方に元気と夢を与える作品を提供していくことが使命! 良質な作品とそれにまつわるおもしろい裏話をこれからも発信していこうと思います!

さて、本日は明日16日公開、周防正行監督の新作『ダンシング・チャップリン』です。『Shall we ダンス?』以来、15年ぶりとなる草刈民代主演作。バレエダンサーとして引退を表明した彼女のラストダンスをおさめたのがこの映画なのです。

『ダンシング・チャップリン』というのは、フランスのバレエ振り付けの巨匠ローラン・プティ氏が、ダンサーのルイジ・ボニーノのために作ったバレエの演目。しかし、ルイジはすでに還暦を迎え、このままだと『ダンシング・チャップリン』は幻の名作になってしまうと思った周防監督は「フィルムに残したい」と映画化を決意。これに妻・草刈民代のラストダンスをミックスさせたというわけです。

しかし、映画は完成までダメ出しの嵐でした。

まずはプティ氏。周防監督は以前、TVの企画でこの演目を取り上げることになり、プティ氏から許諾を得ていたのに、稽古の初日に本人からダメと言われ「え~、いいって言ったじゃん!」と困惑した経験があるそうです。そして今回も構成はまかせると言いながら、舞台の魅せ方にこだわるプティ氏と、映画の魅せ方にこだわる周防監督のせめぎあいがあり「構成はいいけど、撮り方がダメ」とバッサリ……。

その後、稽古から舞台本番も含めドキュメンタリーを撮影し、スタッフに見せたら「映画ではなく、メイキングですね」とバッサリ。

前半はドキュメンタリー、後半は舞台に分けて、つなげて見せるというアイデアも、草刈女史から「つなげちゃダメよ」とこれまたバッサリ。

そして苦労を重ねて出来上がった映画は、第一部(ドキュメンタリー)第二部(舞台)という二部構成になり、間にインターミッションをはさむ形で完成! 編集に半年かかり、監督が「こんなに試行錯誤したのは初めて……」とこぼすほどの力作となりました。

ちなみに映画は、チャップリンの作品をバレエで魅せるというその魅力に加え、ルイジ・ボニーノ氏の還暦とは思えない若々しさに驚き、草刈民代を追い続ける映像に監督の妻への愛の深さを知りました。本作はバレエ映画でもあり、愛溢れるおのろけ映画でもあるのですね。(映画ライター:斎藤 香)

『ダンシング・チャップリン』

4月16日より銀座テアトルシネマほか全国公開

監督:周防正行

出演:ルイジ・ボニーノ、草刈民代、ローラン・プティ、ジャン=シャルル・ヴェルシェール、リエンツ・チャン、ナタナエル・マリー、マルタン・アリアーグ、グレゴワール・ランシエ

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ライタープロフィール:http://bit.ly/hlZYAr