「タクシー運転手なんてお給料も安くて、良いことがひとつもない」そんなことを、偶然乗車したタクシーのドライバーがぼやいていました。

タクシーに乗車したときに、運転手と交わされる何気ない世間話。例えば、道路や町名にまつわる話とか、景気の話とか、有名人を乗せたことがあるとか、……本当にたわいもない話をすることは誰にでもあるはず。

しかしときには、運転手だって思わず愚痴をこぼしてしまうこともあります。そこには、泣くに泣けない辛い事情があるのでした。本日は、これまで記者が都内でタクシーに乗車した際、運転手から聞いた、お客様とのトラブルやタクシー業界の厳しいお話しを、いくつかご紹介します。

■タクシー業界の裏話 常に監視されている!?

「ああ、またやってしまった……! 料金メーター入れるの忘れていました。お客様から正規の金額を頂けないだけでなく、一番恐ろしいのはタクシー協会の監視なんですよ。メーターが入っていないのは車上のランプが付かないから、外からでもすぐにわかるんです。都内を車で循環している監視に見つかると、車を止められて、社名や名前を聴取され減点されるんです。さらに会社へも通告され、それが多くなるとドライバーは業務停止となります。運転できなくなるのが、一番怖い」

え、監視者? そんな人がいたとは、いきなり業界の裏側を覗いてしまった気分。ドライバーの話によると、県によっては監視を実施していないところもあるそうですが、監視アリ地域に比べると接客などが疎かになりやすいそうです。都内で減点されて業務停止になったドライバーは、監視制度のない県で仕事を続けることも多いそうとか。

■一度にあらゆることに機転を利かせなければならない

「お客様を乗せたとき、まず行き先を瞬時に理解して道順を考え、後方の車の流れなどにも注意して走行しなければならない。そうすると、料金メーターを入れるのを忘れてしまうことも多々あるんですよね」

こうして忘れたままにしておくと、さっき話に出てきた監視員がやってくる可能性が高いというわけですね。なかなか、シビアな世界です。もし、メーター入れるのをドライバーが忘れていることに気づいたら、ラッキーなどと思わずに、ここはちゃんと教えてあげましょう。あなたのひと声で、業務停止を免れるかもしれないのです。

■乗客とのトラブル 運賃を払ってくれない

「これは老若男女、かなり多くて困っています。目的地に着いても、道を間違ったとか、時間が遅かったとか、様々な難癖を付けて運賃を払おうとしない。要求に応じないと、男性の場合は大声を張り上げる人が多く手に負えません。年配者も若い人もです。しかし一番厄介なのが、女性です。この前は、お婆さんが目的地に着くなり、『はい、私身体障害者だから。これでいいでしょ』と言って、半分も払おうとしない。障害者手帳も提示せず、本来はありえないのですが。昨日も強気な女性のお客さんがね……」

などと、運賃をめぐる騒動は尽きません。目的地に連れて来てもらったのに料金を払わない不届き者に、ドライバーは頭を抱えていますよ。最初からお金を持たずに堂々と利用する人もいるとか。もはや人として信じられません。「ただでさえお給料少ないのに……本当やってられません」と運転手は深くため息を付いていました。社会を疲弊させていくのは、こういう類の乗客に違いない。

■乗客とのトラブル 運転中に声を荒げ捲くし立てる

「これも特に女性に多いのですが、運転中に荒々しい口調で捲くし立てるため、ハンドル操作を誤りそうになります。最初に道順を説明させてもらっていますし、何か彼女たちの気に触れてしまったのでしょうか、なんだか運転する様子を厳しく監視されているみたいなんですよね。そういうお客さまは黙っていても、張り詰めた空気にさせますし……気が散ります」

女性に多いヒステリック。自分本意の考えで相手に意見するのは、せめて家庭内や社内にとどめておいた方が良さそうです。

最後にしみじみとつぶやく運転手。「東京の夜はイルミネーションが輝いて美しいと思うでしょ? そこら辺歩いている人も、みんな普通に見えるでしょ? でも本当の顔は違うんですよねえ……」。

震災のあと、あらためて日本の礼儀正しさが話題になっていたのに、垣間見えるのは悲しくなるほどに違う顔。ごく一部の人の仕業と思って仕方なしとなるのか否か? とにかく、なくては困る交通手段タクシー。ドライバーが減らないよう、人としてのマナーだけはしっかりしたいものですな。

(ライター=ricaco)
画像:flickr=Takashi(aes256)