人物が複雑に交錯した、モノクロの絵。一目見ただけで、その独特の世界観に引き込まれずにはいられなくなる。それでいて、どことなく懐かしいかんじもするし……。ロシア人アーティストOlga Nenazhivinaさんの描く絵に、そんな印象を持ちました。

切れ長の目、着物、日本髪。まるで浮世絵のような人物描写に、日本人なら誰しも目を止めることでしょう。そしてそこに流れ込んでいる、西洋文化のほのかな気配。このような世界を描くことができるのは、おそらくNenazhivinaさんが、周辺にアジア各国やヨーロッパを隣接するロシアに生まれたからなのかもしれません。

1966年にロシア南部に生まれ、プロの彫刻家である父と芸術に造詣の深い母からアートの英才教育を受け育った彼女が、一体なぜこのようなオリジナリティー溢れる作風を持つに至ったのか。そのあたりのお話を、Nenazhivinaさんに直接伺ってみました。

Q なぜ色を使わない「モノクロ」というスタイルをとっているのですか?

「私はとにかく絵をかくのが大好きで、その時好んで使うのが、インクと白色紙です。そしてその際最も重要視しているのが、線。線は絵の中で、完全に正確で活発であらなければなりません。これらの理由から、私はモノクロの絵を描くようになりました」

「それに、モノクロの絵を描いていて、気がついたことがあります。モノクロの絵は色のついた絵よりも、人々の感性に強く訴えかけ、想像力を刺激するようなのです。私もそうですが、人は皆、モノクロの絵を見るとき心の中でそこにそれぞれが思い描く色を塗っているのでしょうね

Q あなたの絵に出てくる人物は、日本人や中国系の人が多いように思います。それはなぜ?

私は葛飾北斎の絵を幼いころに見て以来、ずっと彼の絵に恋をしています。彼の絵を何時間も見ていることもありました。日本画や浮世絵に影響を受け、それをはじめて絵に投影したのは10歳のとき。アジア人の顔や体、そして漢字を描きました」

「私の中にもアジアというルーツがあります。だからこれからもアジアの空気をとりこんだ絵を描いていきたい。私はアジアの人々に、奥深さと美しさを感じるのです

なるほど。Nenazhivinaさんの絵には、「Nenazhivinaさんという人となり」そのものが現れていたのですね。

Nenazhivinaさんは、「絵と描き手の関係は人間関係と同じ」と話します。距離を容易に縮められることもあれば、仲良くなるのに相当の時間を要する場合もある。絵もこれと一緒で、できるまで2~3時間しかかからないこともあれば、激務と呼べるほど苦悩するときもあるのだそう。「だからこればっかりは、技術の問題ではないの」。

これほど日本人と関係の深い絵を描いているにもかかわらず、残念ながら今のところ、Nenazhivinaさんの絵は日本でほとんど知られていないよう。でも一度知ってしまうと癖になる。彼女の描く絵には、そんな不思議な魅力が宿っているように思います。

心地よくも奇妙で魅力的なNenazhivinaさんの世界を、たっぷりとお楽しみください。

(文=田端あんじ)

参考元:nenazhivina.com( http://goo.gl/H1PG7

▼どこかで出会ったことがあるような、でも初めて見たような、そんな絵です