きらびやかなファッションに身を包んで楽しげに歩くモデルを、奇異の目で眺めている女性たち。米『LIFE』誌からのアーカイヴです。

時は1959年、モスクワで開かれたクリスチャン・ディオールのファッション・ショーでのひとコマ。文化風俗が厳しく規制された社会主義国家の人々が、自由で裕福なヨーロッパ文化に度肝を抜かれている……そんな構図がすぐに浮かびますが、実際のところどうだったのでしょうか?

当時のソヴィエト社会主義共和国連邦は、スターリンの死後、彼の恐怖独裁政治を批判し、西側諸国との平和共存をアピールしていたフルシチョフ政権の時代です。

一方のディオールは、創始者クリスチャン・ディオールの死後、若きイヴ・サン・ローランがヘッドデザイナーとして活躍していた時代で、これは「鉄のカーテン」の向こう側で開かれた初めてのファッションショーだったそうです。

場所は、モスクワ赤の広場に今もある、グム百貨店というショッピングモール(国営)。物資不足の時代にも品切れを起こさないという、国民と世界に向けたソヴィエト連邦の一大ショーウィンドウでした。

そうした背景を知ったうえで改めて写真を観てみると、色々なことが見えてきます。

艶やかな衣装に身を包んだモデルたちを、怪訝そうな表情で見つめる通行人の女性たち。なかには露骨にしかめっ面の人もいて、街中で相当に浮きまくっていることがわかります。おそらく現代のロシアであれば、こんな表情を出してしまう方が珍しいはず。

その一方で、いくつかの写真では、フォーカスされている農夫風の女性たちよりも、軽くて明るい服装をした若いモデル以外の女性たちが奥に映っていますよ。もしかしたらカメラマンによる「演出」もあったのかも? 皆さんには、この時代の人々のファッションスタイルに何が見えるでしょうか?

ちなみに現在、このGUM百貨店にはディオールのショップもちゃんとあるそうです。

(文=黒沢くの)

参照元:retronaut.co(http://goo.gl/FokCh)