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毎年トレンドの洋服をファストファッションで買って、翌年になったら新しいトレンドの洋服を買う。急いで仕事から帰ってレンジで温めたコンビニご飯ををかき込む。こういった行動に疲れて、もっと丁寧に暮らしたいものだなあと思っている皆さん。皆さんと同じような気持ちで生活を変えた人たちが、今アメリカでクールだと言われているのをご存知ですか?

今、アメリカの人たちが憧れの眼差しを送るのはオレゴン州のポートランドという場所。西北部有数の都市ですが、すぐ近くには大自然が広がっています。かつては単なる地方都市のひとつだったポートランドが、現在では全米の「住みたい街ランキング」の上位に常にランクイン。その理由は、自然と都会的なスタイリッシュさが同居し、人々が肩肘張らずにそれぞれのスタイルを貫きながら、日々の暮らしを大切にしながら生活しているからです。

◼︎ポートランド的価値観の特徴とは?

そこでの価値観の特徴は
・ 無理がなく自然体であること
・ 自分やその土地の良さ、持ちものを生かすこと
・ ずっと続く確かなこと、品質の良いものを尊重すること
・ 人とのつながりを大切にすること
・ 自然環境を守り、楽しむこと
・ 個人で、でも世界に向けた発信をしていること
・ 都会的な洗練さやアーティスティックなものとローカルの融合
ということ。
その結果、ポートランドは「住みたい都市」として選ばれているだけでなく、「全米で最も環境にやさしい都市」、「全米で最も菜食主義者にやさしい街」に選ばれるような街になっています。

現在、こういった価値観は世界的に受け入れられ、同時多発的に同様のコミュニティが生まれたり、各地に派生したりしています。

◼︎日本でも、同様の価値観で生活している人たちが増えてきている

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もちろんこの流れは、特に震災以降、日本でも広がってきています。個人で営むおいしいパン屋さんが首都圏から水がきれいな地方に移転したり、有名ブロガーが地方に引っ越したり。ファッション・デザイナーがあえて地方に引っ越して、その地方の技術を使った作品を生み出したり。

自然を身近に感じる「田舎」で、きれいな水や伝統、おいしい野菜など、その地域にあるものを使って、スタイリッシュに丁寧に暮らす人が増えているのです。

◼︎様々な「田舎暮らし」の方法

ひとくちに「田舎暮らし」といっても、そのスタイルはさまざまです。都会から完全に移住する形、プロジェクトのように中期的に住む形、都会と地方の両方に拠点を持って行き来をする形、キッチン付きの宿に比較的長期で旅行する形など、たくさんの人がさまざまな方法で「田舎暮らし」を楽しんでいます。

◼︎千年陶画プロジェクトTai folksの試み

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イラストレーターの松尾たいこさんが初めた千年陶画プロジェクトTai folksは、こういった流れのなかでも注目すべきアートプロジェクトです。

松尾たいこさんは数々の小説の装丁イラストを担当したり、六本木ヒルズ土産物ナンバーワンのヨックモックのパッケージを担当したりと幅広く活躍中のイラストレーター。イラストのオシャレさだけでなく、ライフスタイルやセンスの良い着こなしも多くの女性の心を掴み、女性誌でもよく取材されています。
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松尾たいこさんは15年前の作品を今見ても「都会的なスタイリッシュさがあり、ポップでクールで新しい」と感じる稀有のイラストレーター。千年陶画プロジェクトTai folksは、そんな彼女が作品を陶器でできた板にドロ絵の具で描き、釉薬をかけて焼き付けて「陶画」を作るプロジェクトです。

◼︎福井の自然を感じる、古民家を再生したアトリエで制作

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「都会的」と言われている松尾さんがこのプロジェクトを行っているのは福井県。アトリエは福井県敦賀市、作品を焼く窯は福井市にあります。アトリエはおしゃれに改装した古民家を利用。このアトリエは地域再生と新しい事業の芽として古民家を再生していた地元の建設会社、株式会社北山建設の社長さん、北山大志郎さんと松尾さんが偶然知り合いだったために、アトリエとして使うことが決まったんだとか。
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海あり、山あり、畑ありの福井の自然を存分に感じるアトリエは本当に気持ちがよく、ここで作られるアートにもその風を感じます。

◼︎福井に残る越前焼の技術も利用

また福井県は越前焼の伝統の残る地でもあります。越前焼は850年の伝統を誇っていますが、現在後継者不足で悩んでいます。松尾さんは越前焼の技術が廃れてしまうのは惜しいと、陶画を作るのに越前焼きの伝承者とも相談しながら試行錯誤をくり返しています。また、いずれは越前焼きとのコラボも考えていて、伝統と都会のセンスをミックスして新しいものづくりをしようと考えているそうです。

◼︎「田舎暮らしを楽しむ」プロジェクト

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「新しい時代のセンスの良さ」をビシビシと感じるプロジェクトですが、松尾さんはそれを狙って始めたわけではない様子。福井で出会った多くの人々とのご縁と、松尾さんが日本画や陶芸を学んでいたこと、もともと福井県が好きだったこと、北陸新幹線が来年3月に開通して、松尾さんが拠点にしている東京と軽井沢が福井県に近くなることなど、さまざまなことがベストタイミングでつながって実現しただそうです。

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松尾さんが作品作りのために福井に訪れると、夜には福井の友人や各地から駆けつけた友人がアトリエに集まり、蟹や日本酒などの福井のおいしいものを味わい、語らう生活が始まります。人の縁を大切にし、「田舎暮らし」を楽しみつつ作られていくアート作品は、もともとの松尾さんのポップでクールな作風に加え、福井ののびやかな自然の風を感じてとっても気持ちがいいのです。

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第一線で活躍中のイラストレーター松尾たいこさんも楽しむ「田舎暮らし」。年末年始に故郷に帰る人は、「自分らしいスタイリッシュな田舎暮らし」を検討してみてもいいかもしれません。

Top画像=Flickr(Paynes Hut
取材協力、写真提供 = Tai Folks 松尾たいこさん
取材、執筆 = FelixSayaka (c) Pouch