【公開中☆最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、公開中の作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップしたのは、山田孝之主演映画『映画 山田孝之3D』(公開中)です。試写で見られなかったので、公開初日に劇場で鑑賞して来ました。どのような映画なのかあまり情報を入れずに見たのですが、これまで見たことのない映画でした。(以下、ちょっとネタバレあるので要注意)

【山田孝之×松江哲明×山下敦弘によるカンヌ映画祭応募作】

もともとはテレビ東京で放映されたドキュメンタリードラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」から始まった企画。カンヌ国際映画祭で受賞できる映画を作ろうと、ドラマに出演していた芦田愛菜主演で進められていた作品です。ドラマの最終話では、この『映画 山田孝之3D』がカンヌ映画祭に応募される様子が放送されていたそう。

この映画は、山田孝之本人が「僕の今までの人生とこれからの全てが詰め込まれています」と語る通り、33年間の人生を語っています。そんなに饒舌な人じゃないと思われるのですが、根掘り葉掘り聞かれ、それに対して一生懸命、記憶の糸を手繰り寄せながら話しています。

【語りを聞きながら、山田孝之の宇宙へ】

ドキュメンタリーといっても「山田孝之のカンヌ映画祭」とは違い、行動よりも語りがメイン。山田孝之の語りを聞きながら、彼の宇宙の中に観客も入り込むような感じ。観客に対して、山田孝之が自分の歴史を目の前で延々語ってくれるという作りで、思わず「それは……」と質問を投げかけたくなるのですが、映画だからできないもどかしさなどもあったりして。

でも、なんで3Dなのかはわからなかったですね。劇場公開するにあたって、作品+αの要素が必要だと思ったのでしょうか。でも「料金が高くなるので、3Dじゃなくていいんだけどな……」と正直思いました。

【ハイライトは鹿児島の実家編】

女の子、初恋などプライベート話は数々あるのですが、やはり少年時代、家族の話がいちばん響きました。熱狂的なファンを持つ山田孝之ですから、ファンなら知っていることなのかもしれないけど、結構複雑な家庭だったようなので、その中でいろんなことを思いながら成長していったのだなと。やんちゃな孝之少年ゆえに、仕事の途中で学校に呼び出されるお母さんもけっこうな苦労があっただろうな~と想像。


彼は記憶のヴィジュアル化とそれを語る術を持っているようで、話を聞きながら、私の脳内にも少年時代の山田氏の映像がポンポン浮かんできました。いじめられていたエピソードは切なくなりましたし、ケガをしたとき保育園の先生の車で病院へ向かうというエピソードは、不謹慎かもしれないけど爆笑しました。

また俳優業についても力強いコメントがあり、彼の演技への取り組み方がわかります。山田氏の話を聞きながら、脳内シアターで再現するというのもなかなか楽しいものです。

ハイライトは、リアルな故郷の映像でしょうか。これ以上ネタバレすると見る楽しみを奪ってしまいそうなのでやめますが、けっこうジーンとしましたよ。

【本当か嘘かわからない?】

欲を言えば、もうちょっとゲストがいても良かったかなあと思ったりしましたが、彼の熱狂的ファン、彼のことを最近好きになったファンは楽しめますよ。どこまで本当でどこまで嘘か、わかりませんけどね!

執筆=斎藤 香(c)Pouch

『映画 山田孝之3D』
(2017年6月16日より、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
監督:松江哲明、山下敦弘
出演:山田孝之、芦田愛菜(友情出演)
(c)2017「映画 山田孝之」製作委員


▼映画『山田孝之3D』予告編