【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、大泉洋と松田龍平の人気シリーズ『探偵はBARにいる』の第三弾『探偵はBARにいる3』(2017年12月1日公開)です。はっきり言いましょう……本作はこのシリーズの最高傑作ではないかと思います!

何がそんなに面白いのか。では、第三作目の魅力を明らかにしていきたいと思います。

【物語】

探偵(大泉洋)のもとに依頼人がやって来ました。今度の依頼人は高田(松田龍平)の後輩、原田(前原滉)。行方不明になった恋人の麗子(前田敦子)を探してほしいと頼まれ、軽い気持ちで引き受けます。

さっそく麗子が所属していたモデル事務所に調査に行くと、その事務所の正体は風俗店。そこで探偵は、風俗店のオーナーのマリ(北川景子)とすれ違います。「どこかで会ったことがある」と感じる探偵。

しかし店を嗅ぎまわっていたことがバレて、探偵と高田は屈強な男にボコボコにされます。二人は麗子の行方不明の裏に、深い闇があると気付くのです。

【探偵と高田の名コンビに再会できる喜び!】

やはりこの映画の一番の喜びは、大泉洋氏演じる探偵にまた会えるということ! セリフとアドリブがミックスされているような軽妙な芝居は本作でも健在。ハードボイルドな探偵のかっこよさと、高田とのかけあいでのしゃべりの面白さ! ひとつのキャラでふたつの大泉洋を楽しめます。

探偵の事務所代わりのBAR・ケラーオオハタや、行きつけの喫茶モンデも登場するし、おなじみの拷問シーンも健在ですよ。

寒風吹き荒れる海で探偵は叫びまくり、本作でも体をはっています。

そして今回の大注目ポイントは、高田が後輩のために珍しく能動的に動くことでしょう。体温が超低そうな高田が「後輩のためだから」と、ちょっとだけポっと燃えているのが可愛いし、自分から動き始めて新鮮! 何気に積極的なので、探偵がとまどうほどですから。

また、ケンカ負け知らずの高田をボコボコにする敵陣のエース・波留(志尊淳)も登場するなど、高田がらみの新展開は見ものです。

探偵といえばハードボイルドなイメージがありますが、このシリーズは「ルパン三世」的。かっこよさとユーモアがハーフ&ハーフなところが良い。その配分が絶妙なんですね。

【3人の女性陣が個性を放つ!】

このシリーズで物語の鍵を握るのはいつもヒロインですが、今回は北川景子、鈴木砂羽、前田敦子の3人が探偵にからんできます。

事件を転がしていくヒロインは、北川景子さん演じるマリ。悲しい過去を封印し、秘密を抱えながら策略を巡らす風俗店オーナーを演じています。

前田敦子さんが演じた行方不明の麗子は、天然のヤバさ全開でストーリーをかきまわし、鈴木砂羽さんが演じた探偵と旧知の仲の娼婦・モンローは、姉御的存在として探偵をさりげなくサポート。

本作は、3女優の個性がぞれぞれ立ち、事件にうまくからんでくるので、物語にすごく厚みが出ています。

【永遠に続いてほしい最高のシリーズ】

大泉洋氏の故郷・札幌を舞台にした映画『探偵はBARにいる』シリーズ。原作は、作家・東直己のハードボイルド小説「ススキノ探偵シリーズ」です。この映画シリーズは原作を敬いつつ、映画ならではの世界観を構築し、キャスティングもバチっと決まり、1,2ともに大ヒットしています。

でもその結果にあぐらをかかないのが大泉氏。3を製作するにあたり、完成した脚本をプロデューサーや脚本家とブラッシュアップしながら煮詰めていったそうです。それだけこのシリーズにかける愛は強いのです。

【メリハリが効いていて飽きさせない】

探偵と高田、おなじみの源(マギー)、峰子(安藤玉恵)、フローラ(篠井英介)などの仲間とのシーンでは、安心できる笑いやホノボノした空気を作り出し、マリ、麗子、モンローの女性3人や、敵側の波留、謎めいた北城(リリー・フランキー)といった新しい登場人物とのシーンでは、ヒリヒリしたスリリングなシーンを作り出しています。

本作はおだやかな部分とスリルのある部分、その二つの要素がうまく溶け合っていて、だから面白い! 笑いとドラマ、アクションの緩急のつけ方など、メリハリがあるから実にノレます。前作にあったエロさは控えめなので、女性もOKです。

今後も続けてほしいなあと思わせる『探偵はBARにいる3』。ヒットすれば4もできると思いますから、このシリーズのファンのみなさんは劇場へGOですよ。

執筆=斎藤 香 (C) Pouch




『探偵はBARにいる3』
(2017年12月1日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:吉田照幸
出演:大泉洋、松田龍平、北川景子、前田敦子、鈴木砂羽、リリー・フランキー、田口トモロヲ、志尊淳、マギー、安藤玉恵、正名僕蔵、篠井英介、松重豊ほか
(C)2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

▼映画『探偵はBARにいる3』予告編