【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは木村拓哉、嵐の二宮和也の初共演が超話題のミステリー映画『検察側の罪人』(2018年8月24日公開)。この映画は制作発表のときから、ジャニーズファンはざわざわしっぱなし。奇跡の共演ですからね! しかも監督・脚本は『駆込み女と駆出し男』『関ヶ原』の原田眞人監督!

では、物語からいきましょう。

【物語】

都内で老夫婦の強盗殺人事件が発生。事件を担当することになったのは、東京地検刑事部のエリート検事・最上(木村拓哉)と刑事部に配属されてきた新人検事の沖野(二宮和也)。数人の被疑者があがり、最上はその中から松倉(酒向芳)に狙いを定めて、執拗に追い詰めていきます。沖野は、松倉に異常にこだわる最上に疑問を抱き始めるのですが……。

【大先輩を立てた二宮和也の大人の演技に圧巻】

私が試写で注目していたのは木村&二宮の演技バトル!

映画を観る前は、正直、二宮さんが先輩の木村さんを演技で圧倒するのではないかと思っていました。二宮さんの実力は誰もが認めるところですし、彼自身も大先輩の胸を借りつつも、自分の存在感を見せるチャンス。何なら超えてやる!くらいの気持ちで臨んでいるのではないかと考えたからです。しかし、二宮和也は大人でした。

木村さんの演技に寄り添うようなスタンスで芝居をしていたのです。松倉の取り調べで声を荒げ、松倉の人を食ったような態度をマネて心を揺さぶるなどの見せ場はありましたが、自分の立ち位置を見失わず、1歩引いて、冷静かつクレバーな演技を見せていました。

個人的にはもっとパワーを上げて対等になってもいいんじゃないかと思いましたけど、抑制された演技もまた良かった、やっぱりニノは巧い!

【スクリーンを制する木村拓哉の存在感!】

木村拓哉演じる最上検事が松倉に執着するのは、過去に松倉が重要参考人になった女子高生殺人事件の被害者と知り合いだったから。間違いなくクロなのに逃れた松倉のことを許せない最上……。表向きクールに装いながらも内心は怒りに震え、自身の正義に向かって突き進みます。

最上が完全に冷静さを欠く後半、木村さんの演技は鬼気迫るレベルへと上昇! この殺人は松倉が犯人じゃないといけないのだ! という執念が彼の中で渦巻いているようで怖かったです。映画をグイグイとひっぱりながら進み、スクリーンを圧倒する力を見せつける木村拓哉。彼の底力を見た気がしました。もうスターのオーラがハンパないです。

【2時間3分でも足りない、もっと見ていたい!】

どうしても木村&二宮のことを語りたくなる本作ですが、ミステリー映画としての感想としては、最後が「えっ!」という感じです。個人的にはもう少し先まで見せてほしかった。最上が職業倫理を壊してでも貫きたかった正義は正しいのか否か……。でも2時間3分もあるのに「もっと見たい」と思わせる映画ってなかなかありませんから、それだけ力作だということですね!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

検察側の罪人
(2018年8月24日より全国東宝系にて大ヒット公開中)
監督・脚本:原田眞人
原作:雫井脩介 『検察側の罪人』(文春文庫刊)
出演:木村拓哉、二宮和也、吉高由里子、平岳大、大倉孝二、八嶋智人、音尾琢真、大場泰正、谷田歩、酒向芳、矢島健一、キムラ緑子、芦名星、山崎紘菜、松重豊、山崎努ほか
©2018 TOHO/JStorm

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