「高速道路脇で、黒いピット・ブルの子犬がびっこを引いている」と連絡を受け、保護に向かったアメリカのレスキューチーム「HOPE FOR PAWS(ホープ・フォー・ポーズ)」のメンバー。

しかしそこにいたのは「子犬」ではなく、ガリガリにやせ細った成犬でした。レスキュー隊員は口笛を鳴らしながら声をかけますが、けたたましく吠え立てられ、思わず動揺して声を上げます。

まったく人間を信用せず、吠え続けるワンコ。頑固で気性の荒い犬を相手に、救出は困難を極めます……!

【前足を大ケガしている…】

ワンコにやさしく声をかけ、落ち着かせようするレスキュー隊員。しかし、ワンコは寝床にしている落ち葉の山に隠れたまま、まったく警戒を解いてくれません

ためしに食べ物を少し与えてみたところ、かなりお腹が空いていた様子。少し落ち着いたところで首に縄をかけ、そこから手前に食べ物を投げつつ、慎重におびき寄せます。

明るいところへ出てくると、ワンコの前足がひどく折れていることがわかりました。気が立っているのは、痛みに耐えているせいでもあるようです。

食べ物で気を引きつつ、どうにか車を停めているところまで連れ出しました。

【逃げられたぁああぁ!!】

ところが、車のバンパーに首縄をつなぎ水を飲ませる準備をしている間に、なんとワンコが縄を食いちぎって逃走! ひえぇぇ!

これにはレスキュー隊員も思わず「マジか〜!?」と落胆。長時間の努力が水の泡に……もう食べ物も全部あげてしまい、ワンコの気を引けるようなものは何もありません。

【根気とチームワークで救い出す】

しかしレスキュー隊員はあきらめません。「そんなふうに吠えれば、ボクが君を置いていくと思ってる? そんなことにはならないよ!」と、強気でワンコに言い聞かせます。

もういちど首縄をかけ、水を飲ませ、声をかけながら歩かせて。頑固なワンコが途中で座り込み「絶対にココから動かない」という顔をしてみせても、根気よくなだめて……。

ワンコが静かにしっぽを振るのが見えますが、レスキュー隊員によると「しっぽを振っているのが常に”うれしい”のサインだとは限らない。それを知っておくのが大事」とのこと。このときは、まだまだ危険な状態だったのだとか。

犬の様子を注意深く観察し、その上で適切な対応ができるのは、レスキュー隊員に長年の保護活動の経験があるからこそでしょう。

その後、ヘルプにやってきた隊員と合流し、ようやくケージにワンコを入れることに成功! すぐさま、動物病院へと向かったのでした。

【もう一度、愛されるように】

ワンコの前足の骨折はかなり状態が悪く、かわいそうですが切断することに。しかし痛みから解放されたことで、ワンコの気持ちにも変化があったようです。

いら立っていた様子はなくなり、スタッフに甘えたり、外を走り回ったりできるほどにまで元気になりました。

これからはしつけなどのトレーニングを経て、里親を探すことになっているのだそう。このワンコがもういちど、ちゃんと家族の一員として愛されるまで、彼らのケアは続きます。

【犬の保護活動は甘くない】

子犬か成犬かを問わず、これまで数多くの犬を保護してきたベテランのレスキュー隊員。それが今回、なぜこれほどまでに怖がっていたのかというと、この犬が「ピット・ブル」だったからです。

「ピット・ブル(アメリカン・ピット・ブル・テリア)」は、アメリカで闘犬として開発された犬種。残念ながら、適切でない飼育下では人を襲う例もあり、飼育が規制されている国や地域が世界各地にあります。

大人ですら、ピット・ブルに襲われればひとたまりもありません。威嚇するピット・ブルと対峙するレスキュー隊員は、まさに命がけだったのです。

犬の保護活動は甘くない、ということがひしひしと伝わってくる動画でした。

参照元: YouTube
執筆=森本マリ (c)Pouch

▼緊張感が伝わります……