2016年1月に樹木希林さん出演の企業広告を新聞4紙に同時掲載し、話題を呼んだ宝島社。水の中に仰向けで浮かぶ樹木さんの姿と「死ぬときぐらい好きにさせてよ」のキャッチコピーがセンセーショナルで、度肝を抜かれたものです。

そして2018年10月29日、あらたに樹木さんをフィーチャーした企業広告「あとは、じぶんで考えてよ。」が朝日新聞に、「サヨナラ、地球さん。」が読売新聞に掲載されました。

今回の広告の意図について、「あらためて『死』について考えることで、どう生きるかを考えるきっかけになれば」と宝島社は話していますが、9月15日に樹木さんが亡くなったばかりなだけに、なおさら私たちの心に迫るものとなっています。

【あとは、じぶんで考えてよ。】

まずは朝日新聞に掲載された「あとは、じぶんで考えてよ。」。こちらは樹木希林さんをはじめ、夫の内田裕也さん、孫の内田玄兎さん・内田雅樂さん・内田伽羅さん、娘の内田也哉子さん、そして義理の息子である本木雅弘さんと撮影された写真が使われています。


これは広告のために撮られたものではなく、広告制作のために遺族から生前の写真を借りたものなのだとか。

余白部分に小さな文字で書かれた文章は、樹木さんの生前の数々の言葉をもとに今回の広告用に制作したものだそう。長いので全文は紹介できませんが、私が心揺さぶられた箇所をいくつか抜粋します。

・絆というものを、あまり信用しないの。期待しすぎると、お互い苦しくなっちゃうから。
・だいたい他人様から良く思われても、他人様はなんにもしてくれないし(笑)。
・迷ったら、自分にとって楽なほうに、道を変えればいいんじゃないかしら。
・自分は社会でなにができるか、と適性をさぐる謙虚さが、女性を綺麗にしていくと思います。
・死に向けて行う作業は、おわびですね。謝るのはお金がかからないから、ケチな私にピッタリなのよ。謝っちゃったら、すっきりするしね。
・“言わなくていいこと”は、ないと思う。やっぱり言ったほうがいいのよ。

ついつい自分の悩みと照らし合わせて「うーむ」とうなってしまった私。こちらは死生観というよりは、人生、恋愛、仕事など生きる上でのさまざまなことについて考えるヒントが詰まっています。

【サヨナラ、地球さん。】

続いては読売新聞に掲載された「サヨナラ、地球さん。」。こちらは着物姿でペロリと舌を出している樹木さん単独のバストアップ写真が使われています。お茶目でチャーミングで、でもアバンギャルドさもあって……そんな樹木さんの魅力が集約されたような一枚です。


この広告に小さな文字で書かれているのは、樹木さんへのインタビューを書き起こしたような文章。

・がんになって死ぬのがいちばん幸せ
・桜が毎年咲き誇るうちに、「水に流す」という考えかたを、もう一度日本人は見直すべきなんじゃないかしら
・それでは、みなさん、わたしは水に流されていなくなります。

といった言葉の数々に樹木さんなりの死生観が現れていて、ハッとさせられるものがあります。

【樹木希林さんからの最後のメッセージ】

まさに“希林語録”とでもいうべき名言の宝庫。訥々(とつとつ)としたあの独特の口調で話す姿が簡単に思い浮かびますよね。

どう生きるか、どう死ぬか。そこに正解なんてないし、答えは一人ひとり違うけれど、私たちがより人間らしく生きるために考えることは必要だと思うのです。そして、世の中に向けた樹木希林さんからの最後のメッセージは、あらためて考えるためのきっかけを与えてくれることでしょう。全文を知りたい方は、参照元に掲載されていますのでぜひ読んでみてください。

参照元:宝島オンラインプレスリリース
執筆=鷺ノ宮やよい (c)Pouch

▼宝島社公式サイトで公開中の樹木希林さんへのインタビュー動画

▼見た瞬間、誰もがシビれた2016年の企業広告「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」