【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、伝説のロックバンド、クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの生き様を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年11月9日公開)です。1970~80年代にピークを迎えたバンドなので、読者にとっては、昔のバンドというイメージがあるかもしれませんが、クイーンの楽曲は映画、ドラマ、CMなどで使用されているので、聞けば「知ってる!」という人は多いはず。

このバンドのボーカリストのフレディがまたスゴイ人だったんですよ。知的で芸術肌で大胆で破天荒な天才ボーカリスト! 見た目のインパクトもすごいけど才能もすごかった!では、物語からいってみましょう!

【物語】

1970年、ロンドンのライブハウスで「スマイル」というバンドの演奏を見つめているフレディ(ラミ・マレック)。ボーカリストが脱退したことを知るや、歌唱力をアピールして「スマイル」のメンバーになります。ギタリストはブライアン・メイ(グウィリム・リー)、ドラムはロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)、フレディのあと、ベースのジョン・ディーコン(ジョー・マッゼロ)が加入して「クイーン」が誕生!

ライブで高評価を得た彼らはレコード会社と契約。常に革新的な音楽を発表し続け、やがて世界的な名声を得るようになります。しかし、フレディは自身のセクシャリティに悩んだり、愛する人と心が離れたり、孤独に苦しむようになるのです。

【クイーン=フレディ・マーキュリーな理由】

クイーンになる前の若きフレディは、飛行場でアルバイトをしながらライブハウスに入り浸る青年です。本名はファルーク・バルサラでタンザニア出身。出身をからかわれて傷ついたり、厳格な父親から「いつまでロックとかやってんだ!」と怒られたり、居場所が見つからない暗い青年風なんですよねえ。だからブライアンとロジャーと出会い、クイーンを結成したときは「やっと居場所を見つけた!」という感じ。本名が嫌いだから名前もフレディ・マーキュリーに変えて生まれ変わり、そこから才能が爆発的に開花していくのです。

クイーンの楽曲を作り、レコーディングを仕切り、レコード会社とケンカしても決してひるまないフレディは常に強い姿勢で逆境を乗り越え、人生を切り開いてきた人なんだというのが、この映画を見るとよくわかります。その側では、クイーンのメンバーがいつもフレディの意思を支えてくれていた……。エキゾチックな風貌に隠された強さや音楽への情熱、彼らのメンバー愛には本当に胸が熱くなる!

【メンバーしか知らないクイーンの裏側】

本作にはクイーンのブライアン・メイとロジャー・テイラーも関わっているので、メンバーしか知らない名曲誕生の裏側も描かれています。「ボヘミアン・ラプソディ」のレコーディング風景など、フレディがこだわりまくる姿が見られて楽しい。コーラスパートの「ガリレオ、ガリレオ~」をフレディに何度もダメ出しされ「何度歌わせるんだよ!」とキレるロジャーが可愛いとか「We will rock you」の誕生秘話など、クイーンのバンド活動の様々な姿が見られるのに加え、2人が音楽監修をしているので、隅々までクイーンの楽曲が挿入され、もう本当にたまりません!

また唯一愛した女性メアリー(ルーシー・ボイントン)とのエピソードはまさに純愛そのもの。当時はLGBTなんて言葉もありませんから、フレディはセクシャリティに相当苦しんだと思う。体は男性を求めても、心はいつもメアリーを求めているフレディのままならない愛が切なくて、泣けます……。

【フレディを生きたラミ・マレック】

フレディを演じたラミ・マレックは、顔は全然フレディに似てないけど、フレディに見えるという魔法のような大熱演。ラミはフレディの役作りに1年かけ、彼のパフォーマンスを研究しつくしたそうです。

フレディは1991年、エイズにより45歳の若さでこの世を去りましたが、最後の大舞台ライブエイドのシーンの大迫力はこの映画のハイライト。

命を絞った圧巻のパフォーマンスで度肝を抜いてくれますから、大スクリーンの良き音響の劇場で見ることをオススメ!伝説のロックバンド、クイーンの世界に身も心もどっぷりハマってください。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

ボヘミアン・ラプソディ
(2018年11月9日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ブライアン・シンガー
出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボーイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョー・マッゼロ、エイダン・ギレン、トム・ホランダー、アレン・リーチ、マイク・マイヤーズ、アーロン・マカスカー、ダーモット・マーフィ