【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはディズニー/ピクサー映画『トイ・ストーリー4』(20197月12日公開)です。『トイ・ストーリー3』では大学生になったアンディとオモチャたちの別れを描いて「完璧なラストだ!」と世界中で大絶賛されました。その続きがあったとは!『トイ・ストーリー4』はオモチャたちの新たな冒険を描いて、やっぱりいい! めっちゃ楽しい!
でもその一方で、今回の『トイ・ストーリー4』は、いろいろ切ないんです……。では物語から。

【物語】

ウッディやバズ・ライトイヤーなどのオモチャたちは、ボニーという女の子と毎日遊んで暮らしています。しかし、ウッディは少し焦っていました。なぜならボニーが遊んでくれなくなったから。いつもクローゼットの中に置いていかれるウッディ……。

そんなある日、ボニーが幼稚園へイヤイヤ連れていかれるのを見たウッディは、隙を狙って彼女のリュックにもぐりこみ、こっそりボニーを見守ることに。すると彼女は先割れスプーンでオモチャを作り出し、フォーキーと名付けていたのです……。

【ウッディが必死になるほど切なくなる】

大人になったアンディと感動的なお別れをしたウッディたち。しかし、本作ではいきなりウッディに試練が訪れます。新しい持ち主であるボニーに相手にされなくなっていたのです。ウッディは「何かボニーの役に立てることをしよう」と行動に出ますが、その一生懸命な行動はたびたび度を越してしまい、バズに「やりすぎだ」と、注意されます。でもウッディは聞く耳を持たず……。

傍から見ると、そんなウッディがちょっと痛々しい。彼はボニーにしがみつくことで、自分の存在意義を見出そうと必死。だってそれがなくなったら、もうオモチャとしての価値がなくなってしまうから。その気持ちがわかるだけに見ていてすごく切ないんです。

【3つの個性派キャラクターたち】

もちろん「切なさ」だけでなく「楽しさ」も満載です! ウッディと3人のキャラクターたちの関係がとてもユニークなんですよ。まずボニーが作ったフォーキーは「自分はオモチャじゃない、ゴミだ」と、すぐにゴミ箱に突進していく風変りキャラ。ウッディはフォーキーをボニーから離れないようにすることが自分の役目だと考えているので、気が付けばふたりはいつも一緒。そう、本作でウッディのバディは、バズじゃなくてフォーキーなんです。

そして9年前にアンディの家から別の家族のもとへともらわれていった陶器の羊飼い人形ボー・ピープとも再会。『トイ・ストーリー2』以来の登場となる彼女は、さまざまな試練を体験し「私はもう誰のものにもならない!」と決め、自立の道を歩む人形になっていたのです。このボーの生き方がオモチャ的には新しい! 女性が自分たちの意志、権利を主張するようになった21世紀という時代の空気が、ボーという人形をたくましく成長させたのかなと思いました。

そして後半に登場するギャビー・ギャビーは、おしゃべり人形のはずなのに不良品なので声が出ない。だからウッディの声の装置を盗もうと追いかけてくるんですよ。最初は「今回のヒール役はこの子か?」と思ったのですが、実は胸が痛くなるようなエピソードがあり、ギャビー・ギャビーには泣かされました~。

【ウッディの決断に世界がビックリした!?】

3つのオモチャたちとの関係を経て、ウッディの心境に大きな変化が訪れ、彼はある決断をします。それは『トイ・ストーリー』シリーズが新たな世界の扉を開いた瞬間であり、彼らの冒険の旅がまだまだ続くのではないかと期待させるシーンです。正直すごくビックリしましたけどね。「え~!本気なのウッディ」と肩を揺さぶりたい気持ちになりましたが、本作が描く世界は、間違いなくウッディやバズたちにとってターニングポイント。絶対に続編を作ってほしいです!

ちなみに日本語吹き替え版で、ウッディは唐沢寿明さん、バズは所ジョージさん、そしてボーは戸田恵子さんが続投。新キャラのフォーキーは竜星涼さん、ギャビー・ギャビーは新木優子さん、ダッキー&バニーはチョコレートプラネットのふたりが演じています。字幕、日本語吹き替え版、どっちもオススメですよ!

トイ・ストーリー4
(7月12日(金)全国ロードショー)
監督:ジョシュ・クーリー
声の出演:トム・ハンクス、ティム・アレン、アニー・ポッツ、トニー・ヘイル、キーガン=マイケル・キー、マデリーン・マックグロウ、クリスティナ・ヘンドリックス、ジョーダン・ピール、キアヌ・リーヴスほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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