妊娠、出産は、親になるすべての人にとっていち大事。とはいえ、プレママに向けた情報が世の中にあふれているのに対し、プレパパ向けのものって意外に少なかったりも……。

ある日、交際2か月になる彼女から妊娠を告げられ、突如プレパパの仲間入りを果たした「本人」さんもそれを実感したひとり。

「ググっても答えが出ないから自分で考えてみた」ということで、自身が父親となっていく驚きや戸惑い、喜びなどを記したのが本書『こうしておれは父になる(のか)』(イースト・プレス)です。

かくしてここに、男性目線で妊娠、出産、子育て綴ったエモすぎる実況ドキュメントが誕生した……!!!!

【赤ちゃんと対面したパパの戸惑い】

つわりや胎動といった心身の変化で常に赤ちゃんとのつながりを感じる女性。それに対して身体的な変化がない男性。

じゃあ、男性はいつから父親になるの? どこで自分が父親だと実感するの?

そういったことが、とにかく本音ベースで綴られている本書。

ではまず、赤ちゃんが生まれた直後の著者の心中をご覧ください。

「こんなかわいい子……かわいい? いやかわいいかな、この子」
「いい加減目を背けることもできなくなったけど、やっぱアレだ。自分にはまだ『パパスイッチ』ってやつが入ってない」
「スイッチチャンスに気付かないまま40週経って実物と対面して、その相手が縦につぶしたガッツ石松って」

……ガッツ石松は正直すぎるやろ! でも、自分がパパになったと自覚するのってなかなか難しいことが伝わる描写ではありますね。

【夫婦でバッチバチに対立することも……】

いっぽうで、子供が生まれたことでわかりやすく変化が起きやすいのが「妻との関係性」ではないでしょうか。

「授乳のためにまとまった睡眠が取れない妻」「仕事が忙しくて育児や家事に手が回らない夫」……こうしたことで、産後バッチバチに対立してしまう夫婦も少なくないもの。

著者自身もまさにこの壁にぶち当たります。

「食洗器に食器を突っ込んだり洗濯機の電源を入れたりしただけで家のことをやった気になってる」
「自分ひとりの時間が欲しいと言い続けているのに、助けるどころかその方法を考えもしない」

などの妻の言い分に対し、「いつのまにかシーツを洗ってたり家事の取り掛かりの早い妻が、その基準で採点してくる」と考える著者。

【子育てで男性だって変化する!】

しまいに著者はストレスが最高潮に達して、自転車で帰宅する道すがら、車道をノールックで突っ切るという暴挙に出ます……。運が悪ければ轢かれてる! そのときのことを著者は

『や……もう何かきても別にいいっす』くらいのことを思っていた自分を振り返り『あっ今キてんな』と自覚した

と書いていますが、女性が初めての育児でいっぱいいっぱいになる一方で、男性も陰ではこれほどのストレスを抱えていたりするのかと気づかされる部分でもありました。

しかしそこから、「家事と育児のタスクを整理するエクセルファイルを共有する」という解決策をきちんと提示して、問題に対して逃げずに解決していこうとするところもまた、男性が父親になるために変化する姿といえるかもしれません。

こうしたやりとりをふまえた上での、著者の

「そうか、子育て夫婦って、みんなこんな修羅を経て(あるいはその渦中で)フードコートや公園に立っているのか」

という気づきは、まさに真理! なにげない一文ですが、同じく子育て中の人はきっと共感するのでは。私はめっちゃ刺さりましたよ!

【男性の本音がリアルに伝わる育児エッセイ】

今回ご紹介したのは本書の中のごくごく一部。とにかく著者の感情がダイレクトに伝わってきて、どこを切り取っても臨場感がスゴい1冊となっております。あらためて、妊娠・出産・育児って、男性にとってもものすごい変化をともなう一大イベントなのだと実感……!

なお、1万人を超えるフォロワーでツイッターも人気の著者。リアルタイムな育児の様子はこちらで知ることができるので、興味を持った方はぜひフォローしてみてください!

参考リンク:イースト・プレスTwitter @biftech
執筆:鷺ノ宮やよい (c)Pouch