【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはバカリズムが脚本を手掛けた永野芽郁主演映画『地獄の花園』(2021年5月21日公開)です。

OLたちの派閥争いをヤンキー女子の大喧嘩として描いた斬新なOL映画。ひと足先に試写で拝見しましたが、楽しかった! スカっとしました! では、物語からいってみましょう。

【物語】

普通のOL直子(永野芽郁)の職場は、OLたちの派閥争いが激化していました。「誰がいちばん強いか」と日々ケンカに明け暮れるOLたち。

開発部の朱里(菜々緒)、営業部の紫織(川栄李奈)、製造部の悦子(大島美幸)が三大派閥でしたが、そこにやってきたのが、中途採用の蘭(広瀬アリス)。

直子は蘭と仲良くなりますが、喧嘩が強い蘭は三大派閥のOLたちに目を付けられて……。

【喧嘩上等のヤンキーOLと普通のOLが仲良く生きる世界】

とにかく面白くて、爆発力がハンパない映画でした! 普通のOLとヤンキーOLが同じ会社で働いているけど、普通のOLたちはヤンキーたちをまったく怖がりません。

なぜなら、この映画のヤンキーOLはカタギには手を出さない硬派な不良だから。普通のOLたちは派閥闘争に巻き込まれることなく、いたって平和なOLライフを送れるからです。

ヤンキーたちが社内で血まみれの喧嘩をしている側で、フツーOLの直子たちは「ランチ何食べる?」とか言っている感じがノホホンとしていていい! 

「あの人たちも大変だよね~」みたいな話をしていて意外とフツーのOLの方がメンタル強くて図太いんじゃないかとさえ思いましたよ。

【バカリズム脚本が冴えわたる魅力的なヤンキーOLたち】

バカリズムのOLものといえばドラマ&映画『架空OL日記』でしょう。OLあるあるをコミカルに描いて好評でしたが、その超変化球が『地獄の花園』と言えるかも。

喧嘩に明け暮れるヤンキーOLでも、ピラティスや脱毛エステでお肌や体のメンテナンスしていたり、燃えないゴミと燃えるゴミを仕分けするマナーはちゃんとあったり、仕事もそれなりにしていたりする、このアンバランスさが奇妙な笑いを生んでいるんですね。

このセンスはバカリズム脚本の上手さ! 現代女子のリアルをサラっとセリフに溶け込ませられる男性脚本家ってなかなかいない。バカリズムがいちばん巧いのではないでしょうか。

【女優陣がイキイキ楽しそう!その姿を観ているだけでハッピーに】

キャスティングもバチっとハマっていましたね。ヒロイン直子を演じた永野芽郁さんは、彼女のホワワンとした雰囲気がフツーのOLそのものでしたし、ヤンキー軍団もみんな素敵でした~!

悪魔の朱里を演じた菜々緒さんのアクションはかっこいい不良のお手本でしたし、狂犬OL紫織の川栄李奈さんはまさにザ・昭和のヤンキー女子! 大怪獣OLの大島美幸さんは、いつも唇から口紅がはみだしていて、登場するたびに笑えました!

キレッキレの回し蹴りですべての敵を蹴散らしていくカリスマヤンキーOLの蘭の広瀬アリスさんは「私を誰だと思ってるの?」と啖呵切って大暴れしたあとにルミネに急ぐ、そのギャップが良かった。

みんなイキイキ、ケンカしながら人生を楽しんでいて「この会社、楽しそう!」とさえ思いましたよ。

遠藤憲一さんなど男優陣がOLを演じるという驚きの設定など、ちょっとコントみたいな一面もあるのですが、全編サービス精神が旺盛で、かっこよさと可愛さのバランスもよく、直子の真実が明かされるクライマックスに向けての盛り上がりもワクワクが止まりません!

最後のバトルに登場する地上最強OL鬼丸役、小池栄子さんの迫力もすごかったです。

キャスト全員がノリノリで演じているのが本当に良い! コロナ禍の今、モヤモヤした気持ちをヤンキーたちがバーンと吹き飛ばしてくれる映画『地獄の花園』。

広瀬アリスさんがコメントで「続編、あったらいいな」と語っていますが、続編、本当に作ってほしい! それくらい面白かったです。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

地獄の花園
(2021年5月21日より、全国ロードショー)
脚本:バカリズム
監督:関和亮
出演:永野芽郁、広瀬アリス、菜々緒、川栄李奈、大島美幸、勝村政信、松尾諭、丸山智巳、遠藤憲一、小池栄子
©2021『地獄の花園』製作委員会