【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、菅田将暉主演のサスペンス映画『CUBE 一度入ったら、最後』(2021年10月22日公開)です。

本作は1997年に公開されたヴィンチェンゾ・ナタリ監督作『CUBE』の日本版リメイク作品です。

映画ファンの間で人気の高い密室サスペンスであり、日本版の主演は菅田将暉!

ワクワクしながら試写で鑑賞させていただきましたが、はい、面白かったです! では物語からいってみましょう。

【物語】

立方体の箱の中に閉じ込められた男女6名。エンジニアの後藤(菅田将暉)、団体職員の甲斐(杏)、フリーターの越智(岡田将生)、中学生の宇野(田代輝)、整備士の井手(斎藤工)、会社役員の安藤(吉田鋼太郎)。

彼らは知り合いではなく、何も繋がりはありません。

なぜ箱の中にいるのか理由はわからないまま、彼らは脱出を試みます。

部屋の四方に扉があり、開くと同じ箱部屋があり、中にはトラップが仕掛けられた部屋も。それが発動すると、熱感知レーザーや火炎噴射などで即死です。

彼らは、知恵を工夫でトラップをくぐり抜けて移動していきますが、箱は果てしなく続いていくのです。

【冒頭からショックなシーンが!】

1997年に公開された本作のオリジナル作品『CUBE』を映画館へ見に行った私は、リメイク版が制作されると聞いたときから、ずっと楽しみにしていました。

本作は冒頭からけっこう強烈。

箱の中に閉じ込められた男性が、脱出しようとしたところトラップにひっかかって即死!というシーンからスタートします。

まずはファーストシーンで、箱の中の罠と、そこから生まれる死のイメージを観客に植え付け、この殺人ボックスが舞台であることを強調。そして閉じ込められた男女が次々と登場します。

【罠を回避する方法】

箱の中に集まった6人は、全員初対面。お互いに「誰?」という状態です。そんな中、紅一点の甲斐が、自己紹介をしようと提案。それぞれ名乗ることで「この窮地をみんなで協力して脱しないといけない」という気持ちが芽生えます。

すでに井手は、いくつかの箱を突破してきており、扉を開けると靴を投げ込み、トラップ部屋かどうか確認をして移動します。

それに続く後藤たち。しかし、靴が罠にハマると燃えたりして使い物にならなくなるので、「6人全員の靴がなくなったら、どうするんだ?」という声も。

【数字が謎を解くヒントになるけれど】

そんな中、箱と箱をつなぐ扉の部分に数字が表示されていることに気づきます。

実はその数字が暗号となっており、これを解いたとき、部屋に罠が仕掛けられているかどうかわかるのです。とはいえ、安全に移動できる方法がわかっただけで、外に脱出する方法がわかったわけではありません。

ずっと移動を続けているうちに、メンタルをやられていく人々。そもそも見知らぬ人々ですから、もしかして裏切者が隠れているかも! 

罠は逃れても、精神が押しつぶされていくのがよくわかり、常軌を逸した行動に出るのではないかと観ている方もハラハラ!

特にフリーターを演じる岡田将生の怪演は一見の価値あり。

岡田さんはすごくイケメンですが、こういうねじれた精神を持った男もを演じさせると本当に上手いんですよね。美しい悪魔っぷりが良かったです。

【オリジナルと異なる人間ドラマ】

本作の物語はオリジナルにほぼ忠実に作られていますが、違うのは、登場人物がそれぞれ、知られたくない過去や秘密を抱えているというエピソードも描いている点です。

特に菅田将暉さん演じる後藤の過去のトラウマはしっかり描かれており、それが彼の行動に繋がっていくところが良かった。

オリジナルのヴィンチェンゾ・ナタリ監督は「(登場人物が抱える問題について)古い世代が若い世代を虐待している。両世代の鬱積が衝突を起こしているというエモーショナルなストーリーがいい」(公式インタビュー抜粋)と語っているのですが、まさにその通り!

映画を観ていただければ「ナルホド!」と必ず思うはずです。

さて、閉じ込められた人は脱出できるのでしょうか?
閉じ込められた箱の中も、外の世界も彼らにとっては現実ですが、果たして、現実の世界は楽園と言えるのか。

このあたりの描き方は、Netflixで人気の韓国ドラマ「イカゲーム」にも共通しているテーマで、逃げ場のない怖さを感じました。

執筆:斎藤 香(C)Pouch

CUBE 一度入ったら、最後
(2021年10月22日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:清水康彦
原作:ヴィンチェンゾ・ナタリ「CUBE」
出演:菅田将暉、杏、岡田将生、田代輝、斎藤工、吉田鋼太郎
(C)2021「CUBE」製作委員会