「日本人だったら一生に一度くらい富士山に登るべし」
そんな日本国民としての在るべき姿みたいなことを言われたところで、標高3,700 メートルのところにあるチベット・ラサで悲惨なほどの高山病に見舞われた記者にとっては、そんな言葉なんの効力もない。誰がなんと言おうと、二度と高所なんかへ行くものか!
それなのに、ご縁というのはまったくもって理不尽極まりない。夏休みを目前にして、同僚のハトポンがどうしても富士登山がしたいと訴えだしたのでした。
富士山は標高3,776メートル。おいおい、ラサよりも70メートル以上高いじゃないか。30代半ばを前に自分探しがどうとかいわれても私には関係ない。富士登山なんて考えただけで息苦しい!
当初はキッパリと提案を断っていたのですが、「やっぱり日本人として登ってみたいかも……」なんて欲が出てきて結局同行することになったわけです。そうさ、同僚の喜ぶ顔が見られるだけでもいいじゃないか、と何度も自分に言い聞かせつつ。
富士登山経験者のハトポンは、自らの経験で「軽装で登ったけど問題なかったー」なんて言っておったけど、記者は富士登山に大変な恐怖心を抱いていたので、まずは万全な装備を整えることに。
※ちなみに今回登ったルートは、須走り口5合目よりスタート。
【まずは基本装備をレンタル】
目指せ完全装備! とはいっても、登山に必要な装備をすべてそろえるのは金銭的にもかなりの負担です。そこで今回はネットのレンタル品を利用することに。富士登山に必要なもの一式が丸々セットになっていたりと、初心者には大変に心強いサービスであります。
記者が利用したのは、サイト『やまどうぐレンタル屋』の「富士山まるごと6点セット」。内容は下記のとおり。
・雨具(ゴアテックス/ 上下セット&スパッツ)
・登山靴
・ザック
・ストック
・フリース
・ヘッドライト
1泊2日で1万6千円。もちろん、どれも普段使用しているカジュアルな服装で代用できますが、通気性の良さや軽さなど登山に適したつくりになっているため、かなり重宝します。しかも、返却は近くのコンビニから送るだけ! めっちゃ便利やん!
登山靴ですが、厚めの靴下を履く場合は、少し大きめのサイズを選んだほうが良いかもしれません。記者はいつものサイズをレンタルしたのですが、長く続く急斜面を下山するときにつま先がつまり、爪を負傷して散々な目に遭いました※。
(※8/22追記:しかしながらハトポンは1サイズ大きい登山靴をレンタルしたところ、ブカブカで靴擦れしてしまったという。ちなみに靴下は薄地だったそうだ。記者の場合は普段の靴サイズに、厚地の靴下を履いていたのできつかった。1サイズ大きめの登山靴にする場合は、靴下を重ね履きするなどして調整するのがベストかも)
ちなみに雨具にあるゴアテックスというのは「水蒸気は通すけど雨や水は通さない」機能を備えている素材のこと。天気が変わりやすく、また汗だくになりがちな登山最中には、かなり重宝します。
【そのほかの装備】
ほかに記者が準備したのは、アウトドアショップのスタッフもおススメだった速乾性のあるインナーのほか、スパッツ、手袋、厚手の靴下、帽子、インナーダウン、薄地のパーカー(山シャツの代用として)など。
夏山でこんな装備必要なの? と何も知らなかった記者は思いましたが、結局のところこれらの装備すべて活用しました。夏の昼間でも富士山の頂上は、気温6度前後と東京の冬並み! これらの装備がなくても我慢はできるかもしれないけど、やはり初心者なら念には念を入れて準備していくべし。
【持って行ってよかったもの】
自分は高山病になりやすいと、最初から決め付けていた記者。動揺していたせいか、五合目からの登山開始後ほどなくして息苦しさを感じ、酸欠の手足がピリピリとしびれを感じるほどに酸欠に敏感でした。
メンバーから転んだりして危ないぞー! と注意されつつも酸素ボンベ片手に酸素吸い吸い登ることに。元気に登山できたのは酸素のおかげだったといっても過言ではない!
・酸素ボンベ 大サイズ1本
記者はほかのメンバーの酸素ボンベまで吸っていたので、2本持っていっても良かったくらいでした。もちろん富士山の山小屋でもゲットできますよ。
・酸素水
最近コンビニなどでも見られるようになった酸素水ですが、高所ではこんなに効果覿面(テキメン)とは知らなんだ! ひと口飲んだだけで深呼吸したときのようにスーッと息苦しさが改善されます。
※このほか酸素タブレットなるものも持っていってみたけれど、効果のほどはよくわからず。
・ストック
当初は邪魔になるかもしれないなあ……なんて思っていましたが、疲れたときや不安定な足場などで程よく身体の支えになってくれて便利でしたよ!
・スパッツ(足首用)
雨の日や、砂利の斜面を下るときなど、靴のなかに水や小石などが入るのを防いでくれます。これがあるのとないのとでは大違い!
・ようかん(甘いもの)
疲れたときに食べる甘いものって、めっちゃ大切! ここはチョコレートでもいいのですが、夏場でも溶けない“ようかん” は重宝します。しかも今回持っていったのは、「スポーツようかん」というもの。登山やスポーツ時に必要なカロリーや食塩などが手軽に摂取できます。食べたあと、パワーがみなぎってきましたよ。
・日焼け止め+サングラス
頂上に近づくほど強くなる紫外線。ちゃんとサングラスをつけていないと目が赤くなったり、皮膚に負担をかけてしまいます。ちなみに記者は、サングラスを持っていったものの、裸眼で風景を見たいと思いほとんど装着せず。まるでプールで泳いだあとのように赤くなりました。また、日焼け止めを塗り忘れた唇も日焼けして、真っ赤にただれてしまうことに……。
【持って行くべきだったもの】
・下着(速乾性の良いインナー)や手袋(軍手)などの代え
登山スタート時に雨が降ったり止んだりの悪天候で、手袋(軍手)はビショビショ。一方、下着は汗でビショビショ。立ち止まると滅法寒い。山小屋に着替えのための専用スペースがあるわけではないのですが、下着(インナー)は着替えたかった。特に下着などは上下ともに速乾性の良いものを選びたいところ!
・予備のタオル
濡れた頭を拭いただけで、タオルがびしょぬれになった記者。ヒンヤリしてもう使用不可能になってしまいました。一方、カッパを着ていたのでそれほど濡れなかったという登山メンバーであるオオサカの体験談も。
【特にいらなかったもの】
・海外産の栄養食品など
登山するには体力は重要! なるだけエネルギーを維持したいという思いと、パッケージの真新しさに目移りし、多めに持って行くことにした海外の栄養食品。もちろん栄養を摂取するという意味では効果抜群だと思いますが、それよりも「味がやばい!」とメンバーたち。よっぽど窮地に追い込まれた場合は別ですが、今回の富士登山ではひとつかふたつで良かった。
・耳あて
念のため、と思って持っていったら今回の登山では特に必要を感じなかったという、オオサカの意見。とはいえ本人いわく季節や天候によってはあると便利な代物とのこと。
・トイレットペーパー
山小屋のトイレがどんなものか良く知らなかったので念のため水に溶けやすいトイレットペーパーを1本持っていったのですが、どこの山小屋でも紙が補充され、結局一度も使用しませんでした。ポケットティッシュくらいでOK!
【一応持っていくと良いもの】
・メンバーらが持っていって良かったというカッパ(あると便利ではあるけれど……)
不運にも雨に見舞われてしまった今回の登山。一行はカッパ(レインコート)を着用していたので雨でぬれることはなかったのですが、ナイロン製のため通気性が悪く、大量の汗をかき、歩みを止めた途端に汗が冷えて強烈に寒い思いをしました。雨具(上下)を着ていれば、カッパは必ずしも着る必要ないかも? 実際、カッパを着ている人は稀でしたが、なかに雨水が染みこんでこないのかなあとやや心配でもあります。着る着ないは、雨の状況を見て判断すべし。
とまあ、こんな装備があれば万全かと思います。とはいえ長時間の登山になるので、荷物はなるだけ軽くすることも肝心です。お水などは山小屋で購入できるので複数持つ必要はありませんが、常時1本は持っているようにしましょう。水分補給は命綱ですよ!
ちなみに頂上付近では外国人の姿もよく見かけましたが、みなさん半ズボンなど軽装ですごいなあと圧巻した次第です。もちろん、みなさんはマネしないようにしましょう。過去に軽装で登頂したハトポンでさえ、今回は基本装備をレンタルして正解だったと道中つぶやいてました。
ちなみにこのあとの登山で私たちは大変な試練に遭うことになるのですが……それはまた後日ご紹介します! ああ、山ってサイコーッ!(もはや、やけっぱちだよ)
(文=メル凛子/ 写真=Pouchアウトドア部)