我が子を授かれば、写真やビデオでその「成長を記録したい」と思うのが親心というもの。他人にとってはちょっと退屈でも、当の子供が将来「こっぱずかしい」と感じても、そこはご愛嬌。めげずに撮りまくります。親バカ? いやいや、家族写真はいつか「撮っておいてよかった」と思える大切なお仕事なのです!
今ではデジカメや携帯、SNSの普及で、どんどん公開する人が増え、家族写真の性格も少し変わりつつありますよね。今回は、そんな見せる家族写真のなかでも、そのブラックな笑いとたっぷりの愛情がとびきりユニークな連作「世界一のパパ」シリーズをご紹介します!
米ワシントンD.C.に住む写真家デイヴ・イングルドウ氏が、愛娘のアリス・ビーちゃんを授かったのは2010年のこと。新米パパとして、子育てによる寝不足の日々を送っていた彼も、ご多分に漏れず娘の写真を撮りまくっていました。しかしそこはアーティスト、せっかくならクリエイティブで家族や仲間も楽しめる「作品」を撮りたい。娘が将来笑ってくれたら、なお最高! と思い立ちます。
そして生まれたのが、第一作目「世界一のパパ」。明らかに寝不足なパパが、うつろな目つきで宙を見据えています。よく見ると、片手にラグビーボールでも持つように無造作に赤ちゃんを抱え、もう片方の手に握られた哺乳瓶から自分のコーヒーにミルクを注いでいる……! という一コマ。一歩間違えば幼児虐待、なんて言われかねないブラックな写真ですが、それを上まわる愛情とユーモアが作品に不思議な温かさを与えています。
この作品をフェイスブックや写真投稿サイトにアップしたところ、同じような経験を持つ新米パパたちをはじめ、世界中から予想外の大反響が! 以後、シリーズとして作品を撮り続けることに。いつでも「World’s Best Father (世界一のパパ)」とプリントされたマグカップを持ったパパが、それとは正反対のシチュエーションで、可愛らしい娘をコキ使ったり、危ないことをやらせたりとやりたい放題。
「このシリーズで描いているのは、自分が決してなりたくない父親、つまり、不注意で無知で自己中心的、そしてときに横柄でさえあるような父親像なんです。私はいつも自分の抱える個人的な恐れや頭痛の種をユーモアで乗り越えてきました。これらの写真は、いわゆる “父親業” に対する私の恐れをユーモラスに描いたものなんですが、世の中の多くの父親にとっても同じみたいですね」。
そう話すデイヴ氏ですが、父親の経験がなくても見てるぶんには十分楽しい! 細部にまでこだわったプロフェッショナルな仕事ぶりと、パパの味のある憎めない風貌、そしてアリス・ビーちゃんの可愛さがあいまって、どの写真もとっても優しい気持ちにしてくれます。
しかも、一連の作品の世界観の中で、少しずつ成長していく娘の様子がしっかりと記録されています。この子が将来ティーンエイジャーになってから観ても、「うちのパパってイケてるわー」って思うんじゃないでしょうか。それってすごく素敵ですよね!
このシリーズはもちろん、他にも沢山の素敵な写真があるので、ぜひ彼の公式Facebookページや写真投稿サイトFotoblurをチェックしてみてください。
(文=黒澤くの)
参照元:laghingsquid.com(http://goo.gl/h8oNy)、Fotoblur.com(http://goo.gl/3Ir8O)、fecebook.com(http://goo.gl/jXemm)