皆さんは「新宿駅」というと、どのようなことを想像しますか? 一日平均330万人が乗降する巨大な駅で、誰もが慌ただしく歩いている。そんな印象をお持ちかもしれません。
実はこの新宿駅の京王モールに、ひっそりと歴史を重ねる喫茶店があるのをご存じでしょうか。都会の喧騒から逃れ、一息つきたいと思ったときに遠くに行く必要はありません。1953年に創業した「楡(にれ)」は、店構えこそ新しく見えますが、落ち着いた雰囲気と接客で心を和ませてくれます。
・コーヒーはすべてサイフォン式
近頃はどこのコーヒーショップでも、ペーパードリップでコーヒーを落としています。しかし楡では、いまだにすべてのコーヒーをサイフォンで淹れています。味の好みは分かれると思いますが、まろやかな味が好みという方には、ありがたいことではないでしょうか。
・パンケーキというよりもホットケーキ
お店では、パンケーキのセットを提供しています。ここのパンケーキはどちらかといえば、ホットケーキという印象を受けます。実はメニューに「パンケーキセット」と書かれているのですが、「ホットケーキ」とも併記されています。もしかしたら、年配の方への配慮なのかもしれません。
実際に食べてみると、ふんわりしているのに食感がしっかりとしていて食べ応え十分です。トッピングも華やかで、ぜい沢な雰囲気。昔懐かしい味わいに思わず顔がほころびます。
・丁寧な接客
提供されるメニューもさることながら、このお店をもっとも和やかにしているのが接客です。スタッフはきびきびとしていて、お客さんをもてなそうという気持ちが伝わってくるのです。人混みに疲れてお店に入ると、丁寧な応対だけで癒される気持ちになります。
正直、お店は決して派手ではありません。ちょっと厳しくいえば、目新しささえ感じないのです。だから、お店の前を素通りしていく人も多いでしょう。しかし、ときには立ち止まって周りを見渡してみると、思わぬ発見に気づくことがあります。楡はそんなお店。ただ静かに歴史を携えて、60年もの長きにわたって人混みに疲れた人たちを、癒し続けているのです。
(文、写真=佐藤英典)
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