透明度が高く、身につけるとほとんど見えなくなるアクセサリー。これ、実は廃棄される予定だったアクリルを利用して作られています。つまり、ゴミになるはずだったものを原料にしているってこと。
ガラスや氷のように鋭いイメージのあるネックレスは、深いVネックのニットやスーツに合わせても良いようなスタイリッシュさ。でも、このアクセサリーは単に廃棄される予定だった素材を使っているとか、おしゃれだとかということがすごいだけではありません。アクセサリーに秘められたメッセージがデザインのイメージ以上に鋭くとんがっていて、シャッと斬られます。
このアクセサリーはINHEELS(インヒールズ)というロンドン発のエシカルファッションのブランドと、若手アーティストの中村暖とのコラボレーション作品。エシカルファッションとは環境や社会に配慮して作られているファッションのことを指します。
エシカルファッションというと、自然素材の優しげなイメージの洋服を作っているところが多いのですが、INHEELSはひと味違います。「自然環境や労働者の環境を考えたい。世界を良くするために!」と目をキラキラさせて考えているのではなく、「自分が生き抜くために環境を考えたい。自爆回避のために貪欲に自然環境や労働者の環境を考えた服作りをするっきゃない」と考えているから、洋服自体もピリッとスパイシーなのです。
そんなブランドがこの「Canʼt See by INHEELS」というコレクションに託したメッセージは「ファッションが作られる過程は目に見えない」ということ。
「おしゃれ! 安い!」とウキウキしながら買った洋服がどんな作られ方をしているかを、私たちはほとんどの場合、知ることができません。そのため、生産者が有害な染料を使って体を壊し、環境を破壊しながら作っていたり、ほんの小さな子どもが奴隷のように働かされていたり、という問題に加担してしまうことも多々あるのです。知らない、目に見えないっていうのは怖いものです。
このような「目に見えない問題」は、素材の原料を作る過程、商品のパーツを作る過程、商品を作る過程等、いろんな過程で発生し、問題は積み重なっていきます。その「積み重なり」を表現するために、パーツを連続して使用したアクセサリーも。
また、私たちはファッションの購入を考えるときに、作られた過程を考えずに、バーコードに記録された値段ばかり見てしまいます。それを私たちに思い起こさせる、透明なプレートにメッセージが刻印された作品もあります。ね、かなりとんがっていて、切れ味鋭いメッセージでしょう?
INHEELS共同代表の岡田有加さんは
身につけたくなるようなクールでスタイリッシュなデザインに、「しれっと」深い意味を滑り込ませるのが私たちが目指していること。これで少しでも、見えない過程に思いをはせる手助けになれればと思っています。
と話します。
「ファッションは自己表現である」と言いますが、とんがったメッセージが込められていても、こんなにスタイリッシュなデザインのアクセサリーだったらさらっと身につけられそう。オンラインショップでも購入できるので、気になった人はのぞいてみてはいかがでしょうか。
【ブランド情報】
ブランド名:INHEELS
アクセサリーコレクション「Canʼt See by INHEELS」の情報はこちら
購入可能場所:
渋谷ヒカリエ5Fマーケットプレイス(9月1日-30日)
アトリエR内インショップ(営業時間:14時-20時 日曜定休)
取材協力、画像提供:INEELS 岡田有加さん
執筆=FelixSayaka (c) Pouch