まんしゅうきつこ(現・まんきつ)先生のサウナ漫画『湯遊ワンダーランド』第3巻発売記念としてお届けする「女とサウナ」にまつわるインタビュー。前編では「サウナ室のヌシ」編をお送りしましたが、後編はサウナ好き&『湯遊ワンダーランド』読者向けによりコアな「スピリチュアル」編をお送りします!
連載が終わった今だから話せる裏話に、なんだかスピリチュアルな「ととのう」感覚について、さらにはサウナー向けのオススメのサウナ施設の紹介も!
【パンツを干す!? 女子サウナに現れるすごい常連客】
——常連さんといえば……漫画を読みながらずっと気になってたんですけど「下の毛は結界と同じだから絶対に剃るな」とかスピリチュアルなことを言ってくる常連さんって、実在するんですか?
まんきつ:あの常連さんは実在の人です!でも、漫画ではかなりマイルドに描いてるんですよ、実物はもっと強烈です(笑)
一同:え〜っ!!
まんきつ:漫画のネタにもなるから、存在を知ってあえて行ってたんですけど。他の時間帯の常連さんに、あの人がいる時間帯に通ってるっていうと「エッ!」て驚かれるくらいでした。
サウナ女子:まんきつさんは、常連さんと喧嘩したこととかあります?
まんきつ:何か言い返してやろうと思ったこともあったけど、結局最後まで喧嘩はできませんでしたね……。
サウナ女子:ちなみに、私のお気に入りサウナは、ヌシが話しかけてきたりはしないんですけど、サウナ室の中にパンツが干されたりしてますね(笑)ほっといてくれるので、そのゆるい無法地帯感がけっこう好きだったりします。
——なぜか、ハマるのはひとクセある施設だったりしますよね。多少の欠点があってもそこがむしろイイ!みたいな……。
【連載が終わった今だから言える話】
サウナ女子:ところで、サウナを仕事にするのってしんどくなかったですか? リラックスするはずの場所なのに、仕事になってしまうこととか、サウナ中もそれが頭の片隅にあることとか……。
まんきつ:最初は「サウナに入ってそれが漫画になるなんてこんな楽しいことはない!」と思ってたんですけど、基本サウナは平和な空間なので、ドラマチックな出来事もハプニングも何も起きずだんだん描くことがなくなってきて……。なので、サウナに行くと「漫画的な何かが起こらないかな…」とよこしまな気持ちが芽生えたことはありました。連載が終わって今は、純粋にサウナを楽しめてます。
——そんな苦労が……。たしかに、サウナ室って基本はみんな無言ですよね。サウナを仕事にしてるふたりならではの悩みかもしれませんね
まんきつ:そういえば、大阪にあるニュージャパン(※)のレディスサウナが閉店する1日前に行ったんですけど、常連さんが係の人に「明日最後やからぜったい喧嘩になるで! 常連が今まで言えんかったことお互い言い合うから!」とか言ってて。めっちゃ立ち会いたかったです!
※ニュージャパン……大阪の名サウナ。男性専用の梅田店のみを残し、惜しまれつつも2019年3月末に閉店
サウナ女子:本当に言い合いになったのかめちゃくちゃ気になりますね! こないだ行ったサウナでは常連のおばさん3人がすごい楽しそうに談笑してたのに、ひとり抜けた瞬間めっちゃ悪口言い出して怖かったです。
——サウナって「入って気持ちいい」だけじゃなくて、サウナ室のそういう人間模様を観察するのも、なんだかんだで楽しいですよね。
次のページでは「水風呂後に起こる感謝の心のナゾについて」
【サウナで目覚めるスピリチュアル!?】
——そういえば『湯遊ワンダーランド』には、スピリチュアルな話題が多いように感じますが、まんきつ先生は昔からそういった世界に興味があるんですか?
まんきつ:私のおばあちゃんがめちゃめちゃスピリチュアルな人で、昔から妖怪とかおばけとかがいる前提で話をする人だったんですよね。「田んぼの夢見たから誰か亡くなるよ」って言って数日後に、実際に田んぼで事故があったり……とか。
脳の奥の「松果体」っていう場所が、人間の直感を司るって言われてるそうなんですけど。そこが、サウナと水風呂の交互浴ですごく活性化されるんじゃないかなと思ったりしてます。ちなみに、リンゴ酢を飲むと松果体が活性化するってなにかの記事で読みました(笑)
サウナ女子:リンゴ酢ヤバいですね(笑)私も今日から飲もうかな。
——サウナと水風呂の後の「ととのう」状態も言葉では言い表せない不思議な感覚ですし、サウナとスピリチュアルって相性がいいのかもしれないですね。
サウナ女子:私も、サウナから水風呂のコンボでととのったときって、どうして「みんなありがとう」みたいな気持ちになるのかなと思ってました。
まんきつ:たしかに! ととのったときって、なぜか感謝する心が芽生えますよね。神社にお参りするときは神様に「お願い」するんじゃなくて、感謝するのが大事みたいな話もあるし……。感謝って人間の原始的な感覚なんじゃないかと思います。
サウナ女子:現代人って、人間がなんでもコントロールできると思ってる人もいますけど……昔ってコントロールできるものがなかったから、自然への感謝の気持ちが芽生えるのかもしれないですね。
まんきつ:水風呂で、ずーーーっと拝んでる人を目撃したことがあります。
サウナ女子:滝行とか願掛けみたいな感じなのかもしれませんね(笑)
【サウナー向けのおすすめサウナ施設は?】
——前回はビギナー向けのオススメ施設を聞きましたが、サウナーの女性向けにオススメ施設はありますか?
まんきつ:サウナー向けだと、こないだ人に勧められて行った京都の白山湯! 温度がとにかく高くて120度近くあるんです! 一番下の段だけサウナマットがはがされてて、なにかと思ったら常連さんがバッシャバシャ水かけてて、床ロウリュ(※)やってたんですよ。湿度がとんでもないことになってて。サウナ室は熱いわ、水は柔らかいわで、今年イチでしたね!
※床ロウリュ……アツアツのサウナ室の床に水をかけて部屋の湿度を上げ、体感温度を上げる裏ワザ。禁止のところも多いので注意
サウナ女子:私は熱いサウナが好きなので、サウナ室が100度超えのサウナビューティ赤坂なんかが好きです。ゆる〜い空気が、ちょっと静岡のしきじ(※)に似てるかも。あと、熊本の湯らっくすがオススメです。店長からのメッセージが書いてあったりして、施設への愛がすごい! サウナ室、水風呂とすべてのセッティングに愛を感じるんですけど、特に水風呂の進化がすごくて、深さが150cmくらいあったり、紐を引くと水が降ってくる仕掛けもあったりして。ご飯も美味しくて、去年行った中では一番いいサウナ体験でしたね。
※しきじ……静岡県にある有名なサウナ施設。サウナーの間では“聖地”などと呼ばれることも
——最後になりますが、ふたりにとってサウナとはどんな場所ですか?
まんきつ:私、神社よく行くんですけど、サウナに行くのは神社に行くのと近いですね。
サウナ女子:私は普段は人といることが多いので、サウナはひとりで考えごとをする、自分と向き合える場所ですね。
——おふたりとも、どうもありがとうございました!
『湯遊ワンダーランド』は、3巻の後半で編集担当・高石さんの失踪事件が起きるなど、怒涛の展開を迎えます。最後にはまんきつ先生の生活にも変化が……。「なんだか毎日しんどいなあ」って人は、ぜひ『湯遊ワンダーランド』を読んでサウナへ行ってみてください!
参考リンク:扶桑社「湯遊ワンダーランド」
取材・執筆:御花畑マリコ、サウナ女子
Photo:百村モモ (c)Pouch
illustration:©kitsuko manshu / fusosha 2019
▼前回はこちら!サウナを初めて挑戦したいお店や心得などを紹介しているよ