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会議室や居間でお風呂に入る女を激写! なんともシュールな『訪々入浴百景』の作者にお話を伺ってみたぞ

2012年1月23日

えええ……!! いったいどういう状況なの!?

リビングで、キッチンで、縁側で。家族がくつろぐ家の中に突如現れたのは、なんとお風呂に気持ちよさそうに浸かる女性! と思ったら、アート作品でした。そりゃそうですよね(ホッ)。

このシュールなアート作品『訪々入浴百景』に出てくる光景は、そのどれもが不可思議で、なんだか変。不自然な状況に平然と居座る無防備な女性と、その女性を全く気にしない周りの人々。そこに広がるアンバランスな世界は、見ている者になんともいえない不思議な気持ちを起こさせます。

製作者は一体なぜ、このような作品を手掛けたのでしょう。今回は『訪々入浴百景』の作者である坂口真理子さんに、直接お話を伺ってみましたよ!

Q 今回の作品『訪々入浴百景』のテーマや、製作されたきっかけは何ですか?

「作品のテーマは、場の置換による『公と私』や『日常行為』、『常識』の再解釈・不確定性の検証です。きっかけは、『単なる行為は制作における場や手法によってどこまで美術作品として成立するのか』といった単純な好奇心からです」

Q  作品ではご自身がモデルを務めていらっしゃいますが、これは意図的に? それとも、ほかにモデルが見つからなかっただけ?

「制作者である私自らが作品内に介入することで、自分や作品内の他者・鑑賞者と『動的な関係』になれるのではと考えました。『この場で同様のことがありうる、もしかしたら自分の家に来るかもしれない』といった可能性から、内(作品)と外(展示空間)に隔てられていた世界の境界を揺さぶることができるのではないかと思いました」

Q 「日常に入浴シーンを持ちこむ」というシュールな発想は、いったいどのようにして生まれたの?

「何処でも寝るというパフォーマンスを考えていたときに、様々な方との会話の中から思いつきました。特に恩師である作家の萩原朔美さんと写真家の神林優さんのアドバイスが大きかったです」

Q 撮影場所はどこですか? また一緒に写っているご家族は、坂口さんのご家族ですか?

「友人や知人の紹介など様々な方のお家を訪問して制作しました。もちろん家族全員巻き込んでいます」

それでは作品にご家族も参加されているのですね! 

Q この作品を撮影するにあたって、ご家族のみなさんはどのような反応をされましたか?

「真理子がまた変なことやり出したなーといった感じでしたが、温かく応援してくれました。特に父は一番の協力者です」

Q パフォーマンスアートにもなりうると思うのですが、坂口さんはどのようにお考えですか? 写真であることに意味があるとお考えなのか、それともこの行為自体に意味があるのか、その点をお伺いしたいです。

「制作の現場においてはパフォーマンスですが、最終形態が写真というメディアであることがより効果的に作品内の差異を際立たせていると思います」

Q 坂口さんのプロフィールをみると、写真はもとより演劇など実に様々な表現活動をされています。ご自身の位置づけをどう考えておられますか?

「やってきたことやその場がたまたま美術という世界だったのだと思っています。 アウトプットの形式にはあまりこだわっていません。今後も作品に一番合った手法で制作が出来れば良いと思っています」

Q 最後に今後の活動予定を教えてください。

「『訪々入浴百景』の制作に平行して来冬の大学院修了展にむけて新作を計画中です。また友人の劇団での活動も予定中。わくわくするもの、何より自分が一番楽しめるものを作りたいと思っています。乞うご期待下さいませ」

坂口さん、濃密なお話をたっぷり聞かせていただいて、ありがとうございました!

彼女の作品には、ほかにも会議室や物で溢れたひとり暮らしの部屋など、あらゆるシーンでお風呂に入っています。「今ここに、お風呂に入った女性が突然現れたとしたら……」そんなことを考えながら観賞するのも、『訪々入浴百景』のひとつの楽しみ方。

あなたなりの観方で、日常と非日常を行き来する奇妙な感覚を、この作品を通してじっくりと味わってみてください。

(文=田端あんじ/ 写真協力=坂口真理子)

坂口真理子
【略歴】
1987  東京生まれ
2009  韓国 弘益大学美術学部 交換留学派遣
2011  多摩美術大学 映像演劇学科 卒業
東京藝術大学 大学院 美術研究科 先端芸術表現科 在籍

▼独特の世界観に引き込まれますわよ

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