[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、2月25日公開のシャーリーズ・セロン主演作『ヤング≒アダルト』です。ティーンの妊娠を描いた『JUNO/ジュノ』で旋風を巻き起こしたジェイソン・ライトマン監督と脚本家のディアブロ・コディが組み、全米で大絶賛された作品です。
37歳・バツイチ・自称作家だけど、実は売れないゴーストライターのメイビスの親友はお酒だけ。そんな飲んだくれライターのもとに、高校時代の元彼から「赤ちゃんが生まれた」とのメールが。「なんなのこれ!」とプチっときた彼女は、元彼を奪い返し、輝かしい高校時代を取り戻そうと故郷に帰るのです。
かつてはモテモテの女王様だったヒロインは、いまだその幻想を抱えており、アラフォーなのに心はティーンのまま。とはいえ、いまさら女王気分で振る舞っても当然浮きまくるわけですね。そんなヒロインの痛々しさが可笑しいやら悲しいやら……。
PR担当者によりますと、試写で本作を見た女性のうち、20代~30代前半は眉をしかめる人が多かったそうです。「あんなアラフォーになりたくない!」「なんであんなこと(過去の栄光にすがる)するのかわからない」という声も。
一方、ヒロインと同世代は「隣の芝生がよく見えることあるよね」とか「友達にも言えないかっこ悪い部分って誰にでもあるよね」と共感する人は多いようです。あまりにもリアルすぎて「すごいもの見ちゃった……」とショックを受ける人も……。
リアルすぎるのはごもっとも。脚本家のディアブロ・コディは、この物語の発端は知人から聞いたエピソードだと語っています。
「卒業して何年もたってから、高校時代の恋人を追い求めた女性の実話があったの。それを聞いて考えたわ。精神年齢が幼く未熟で、人生で最も幸せだった時期は高校時代というキャラクターがいたら……。幸せを取り戻すには、故郷に帰って元恋人とやり直すことだと考えたとしたら……そこから物語は始まったのよ」
コディが生みだしたヒロインに命を吹き込んだのはシャーリーズ・セロン。ヒロインが着ているキティちゃんTシャツはシャーリーズのアイデアだそう。彼女がNew York TimesのTimes Talk panelで語ったところによると、
「キティは、ティーンのシンボルだと思っていたけど、ふと見渡すと30代でも身につけている人が多いのよ。でも誰もそのことについて否定しない。それっておかしくない?」
そこでシャーリーズはコスチューム担当者に「メイビスのTシャツにキティをつけて」と頼んだそうです。大人になりきれないヒロインの象徴にされたキティちゃん。日本のキティラー女子は耳が痛いかも……。しかもキティとヒロインは同じ年。キティちゃんもヤング≒アダルトだったとは!
そして、この映画最大のビックリは“ヒロインが成長しないこと!” 普通、ヒロインは、どんなにダメでも何かを悟って成長するものですが、メイビスは変らないのです。シャーリーズ・セロンは『モンスター』という映画でアカデミー主演女優賞を受賞しましたが、ある意味、この映画のヒロインも“モンスター”。そして、シャーリーズは痛いのを通りこした激痛なアラフォーを熱演! 彼女のアンチ・ヒロインぶりは一見の価値ありですよ。
(映画ライター=斎藤 香)
『ヤング≒アダルト』
2月25日公開
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コディ
出演:シャーリーズ・セロン、 パットン・オズワルト、 パトリック・ウィルソン、 エリザベス・リーサー
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