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新感覚SF映画『LOOPER/ルーパー』全米大ヒットの陰に天才日本人特殊メイク・アーティストの存在が!【最新シネマ批評】

2013年1月11日

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今週は1月12日公開のSF映画『LOOPER/ルーパー』をご紹介します。全米公開時「革新的なSF映画の登場」「『マトリックス』以来の衝撃」と話題をさらった映画です。なんとジョセフ・ゴードン=レヴィットとブルース・ウィリスが同一人物を演じるという斬新な設定にも驚きの『LOOPER/ルーパー』。若き主人公をジョセフが演じ、30年後をブルースが演じています。ドンデン返しの連続は、秀逸な脚本と絶賛されるのも納得です。

2074年、タイムマシンは開発されていたけれど法で使用を禁じられていました。ところが犯罪組織はタイムマシンを悪用して殺人を繰り返します。敵を葬りたいときはタイムマシンで2044年へと転送し、その時代に生きるルーパーと呼ばれる処刑人に始末させるのです。ルーパーは処刑ごとに金塊という報酬が得られるというしくみ。ルーパーの掟はひとつ「敵を逃していけない」。その掟を守れないとルーパーも殺されてしまうのです。

ある日、ルーパーであるジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、処刑場所で未来からの転送者を待っていると、そこに自分によく似た人物が現れます。それは30年後のジョー(ブルース・ウィリス)。とまどっている間に、30年後のジョーはその場から逃走します。このままでは若きジョーは組織に殺されてしまう。彼は30年後のジョーを追いかけますが……。

『LOOPER/ルーパー』は、監督であるライアン・ジョンソンが10年前から構想を練っていた作品で、監督は以前からジョセフ・ゴードン=レヴィットにアイデアを語っていたそうです。監督曰く「この映画はジョセフを主人公に想定して脚本を書いた、いわゆるあて書き。だからジョセフなくしては成立しない映画なんだ」。

本作でエクゼクティブ・プロデューサーも兼ねているジョセフは「誰かが僕のために役を書いてくれるなんて初めてのこと。そんな役を演じられるなんて興奮したよ」と語っています。

そのジョセフ演じるジョーの30年後を演じるのは、ジョセフと似ても似つかない(!?)ブルース・ウィリス。なぜブルース?と思ったら、この映画にブルースが興味を持っていると聞いて監督が飛びついたそうです。「ブルースの演技力と存在感は文句なし。問題は彼とジョセフが全然似ていないことだった(笑)」

というわけで、二人を似せるために、特殊メイクが力を発揮します。そのメイクを担当したのは、日本人の特殊メイク・アーティストの辻一弘さん。辻さんの起用はジョセフ本人が強く希望したそうです。ジョセフ曰く、

「ハリウッドのメイク関係者に聞けば みんな言うよ“カズ? 彼は最高だ”って。実際 彼はすごかった、大げさじゃなく本物の天才だと思う。まるで熟練の芸術家かマジシャンのようなんだ。だって、特殊メイクの痕跡が見えないのだから!」

他の映画で見るジョセフは小顔の印象ですが、この映画のジョセフは輪郭が一回り大きくなり、人相に変化が……。それが特殊メイクのマジックなのですね。

辻さんは、京都出身で、代々木アニメーション学院の元講師だったそうです。アメリカで特殊メイク・アーティストとして、ジム・キャリー(『グリンチ』)、アンジェリーナ・ジョリー(『ソルト』)などの特殊メイクを担当。これまでアカデミー賞のメイクアップ賞候補になったのは2回。辻さんは、まさにアメリカン・ドリームの体現者なのです。

そんな辻さんが手がけた特殊メイクによる若きジョーは、30年後の自分に時空を超えて出逢って、追いかけっことなる! ブルース演じるジョーの人生経験値が30年分高いため、若いジョーが「30年後の俺は強すぎる」とばかりに悪戦苦闘するのがおもしろく、かつ、スリリング!そんな新しいタイムトラベル映画『LOOPER/ルーパー』の新世界、これは必見ですよ!

(映画ライター=斎藤 香

『LOOPER/ルーパー』
2012年1月12日公開
監督:ライアン・ジョンソン
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス、エミリー・ブラント、ポール・ダノ、ノア・セガン、パイパー・ペラーボ、ジェフ・ダニエルズ、トレイシー・トムズ、フランク・ブレナン、ギャレット・ディラハント、ニック・ゴメス、ピアース・ガニォン
Copyright 2011, Looper, LLC

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