[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、3月22日公開の3D映画『ジャックと天空の巨人』です。有名な「ジャックと豆の木」のストーリーを基にした冒険ファンタジー。
「ジャックと豆の木ならファミリーピクチャーね!」と思って見たら、とんでもない。予想をあっさり裏切り、グロテスクな巨人が攻めてくるというダーク冒険ファンタジーなのです。
不思議な豆を手に入れたジャック(ニコラス・ホルト)とお城から逃げ出した好奇心旺盛な姫イザベル(エレノア・トムリンソン)。雨の日、ジャックはイザベルを自分の家で雨宿りさせます。やがてジャックが持ち帰った豆が巨大化!
天空に向かってどんどん大きくなった豆の木は、イザベルを天空へと連れ去ってしまいます。間一髪逃れたジャックは、王室のエルモント(ユアン・マクレガー)率いるイザベル奪還作戦御一行とともに豆の木をつたって天空へ行きますが、そこは巨人の世界。ジャックはイザベルを助けることはできるのでしょうか……。
王子様のような青年が、お姫様を助けるという物語がベースとはいえ、敵対する天空の巨人がグロテスクで驚き! 巨人の肩から、もうひとつの人格を持った顔が飛び出しているし、巨人のキャラクターがよくできている分、気味の悪さも倍増しています。
本作の監督は『X-メン』シリーズのブライアン・シンガー。「この物語は、『ジャックと豆の木』やアーサー王伝説から生まれた残酷な物語『Jack the Giant Killer』をヒントにして、自分たちで作り上げた物語なんだ。子供時代に読んだ童話の挿絵の印象や抽象的なイメージをスケールの大きなアクション映画にしたんだよ」と、シンガー監督は語っています。
童話って、決して美しい物語ばかりじゃない。残酷さも秘めていますから、そこをシンガー監督ならではの解釈で映像化したというわけですね。さすが一流のクリエイター、見事な仕事、素晴らしいです。
しかし、この映画には3つの「お!」と引っかかるポイントがあります。見れば気づく3つのポイントとは……。
1:すでに見た人が口々に言うのは「これって漫画『進撃の巨人』では?」ということです。特に物語の後半、巨人が襲ってくるシーンなど、記者は「ハリウッドに先にやられちゃったな~」って思いました。『進撃の巨人』の実写映画化は難航しているとの噂ですが『ジャックと天空の巨人』のあとでは、やり方も工夫しないといけなくなるし、製作陣は頭痛いでしょう。それだけ映画『ジャックと天空の巨人』が良く出来ているということなんですけどね。
2:日本語吹き替え版のキャスティングです。タレントさんの起用が裏目に出ているような……。記者は日本語吹き替え版で見たのですが、ウエンツ瑛士さんや平愛梨さん、ほか、お笑い芸人さんたちの顔がちらついて払拭できずにまいりました。もちろんプロの声優さんの見事な仕事も堪能できますが、字幕を見るのが面倒でなければ、字幕の方がより映画の世界に入り込めると思いますよ。
3:主役ジャックを演じたハリウッド期待の若手ニコラス・ホルトに注目! といいたいところですが、彼はまだまだ子供っぽく”坊ちゃん”という感じ。大人女子は勇敢で頼れるエルモントを演じたユアン・マクレガーにキュンキュンですよ。記者は、ジャックに夢中になっているイザベル姫を見ながら「側にエルモントがいるのに、男を見る目なさすぎ!」とさえ思いましたからね。
そして最後に……『ジャックと天空の巨人』は。3Dと2Dがありますが、2Dでも十分楽しめると思いますよ!
(映画ライター=斎藤香)
『ジャックと天空の巨人』
2013年3月22日公開
監督:ブライアン・シンガー
出演:ニコラス・ホルト、エレノア・トムリンソン、スタンリー・トゥッチ、イアン・マクシェーン、ビル・ナイ、ユアン・マクレガーほか
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