あなたは、ジョージ・カーリンという人物をご存知でしょうか。
おそらく日本ではあまりなじみのない彼ですが、アメリカでは有名人。放送禁止用語を多用したユーモア溢れる政治・社会批判、また日本でもおなじみ『きかんしゃトーマス』の英語版ナレーションで、一躍人気者になったコメディアンです。
本日みなさまにご紹介するのは、カーリンさん最愛の奥様が亡くなられた際、牧師さんの説教を引用し友人に送ったとされるメールの一部。内容は、海外サイト『DhiPatriots』より引用しています。
身近な人の死に直面すると、人は往々にして人生で大切なこととはなにか、生きるとはなんなのかということを考えるもの。
カーリンさんのメールは、私たちの心の奥深くを、静かに、そしてときに激しく揺さぶります。それではさっそく、その一部をご紹介することにいたしましょう。人生を慈しみ、また大切な人をより一層大切にしたくなる至極の言葉たち。どうか胸に留めていただければ、幸いです。
*****(以下、DhiPatriotsより意訳)
歴史における私たちの矛盾点、それは次のようなものだ。
ビルは高くなる一方だけれど、人の気は短くなる一方。高速道路は広くなったけれど、人の視野は狭くなった。お金はじゃんじゃん使っているが、得るものは少ない。物は買いまくっているものの、楽しみは少なくなるばかり。
家は大きくなったが家族のかたちは小さくなり、ずっと便利になったのにも関わらず、私たちには時間が無い。学のある者は増えたが常識がある者はめっきり減り、その道のプロフェッショナルと呼ばれるやつが増える一方で問題は一向になくならない。薬が増えたのに、病気がなくなる気配はない。
飲み過ぎ、吸い過ぎ、浪費に走る。それなのにほとんど笑うことはないし、スピードを出し過ぎるし、すぐに怒る。夜更かしをし過ぎるあまり、朝起きた時にはすでに疲れている。読書しなくなった分テレビばかり、そして祈ることもめっきり少なくなった。
たくさん物を持つ、その一方で物の価値が目減りする。私たちはおしゃべりが過ぎる。愛するということを滅多にしなくなって、いつのまにか憎むことばかりが増えていった。
私たちは生計の立て方は学んだが、生きることを学んでいないのだ。寿命が増えただけで、真の意味で生きてなどいない。月まで行けるようになったというのに、隣人とはトラブルばかり。外側の世界を征服したところで、私たちの内なる世界はどうなんだ? 大規模なことは成し遂げてきたけれど、本当に善いことは未だ達成されていないだろう?
空気を洗浄したぶん魂を汚し、原子核をも支配したが差別は一向に消えない。たくさん書いているのに多くを学ばず、計画は増えたのに成し遂げられていない。急ぐことばかりを覚え、待つことを忘れた。多くの情報を抱えるべくコンピューターを作り、どんどんコピーを生みだしたが、コミュニケーションは減る一方だ。
ファーストフードのおかげで消化は遅く、体ばかりでかくて人格は極めて小さい。利益利益で人間関係は希薄。共働きで収入が増えた分離婚も増え、見た目ばかり良い家が増えたけれど、その中は崩壊している。
手軽な旅行に使い捨ておむつ、モラルはなくなり、ワンナイトラブが溢れる。太り過ぎの体を持て余し、死に急ぐため薬を多用する。ショールームに物が溢れかえるなか、倉庫は空っぽのまま。テクノロジーはあなたの元へすぐにメッセージを届けてくれるけれど、読むも読まないも、また消すのだって、今やあなたの指先ひとつですべてが決まる。今はそういう時代なんだよ。
忘れないで、愛する人と多くの時を過ごすことを。だってその時は、永遠には続かないのだから。
忘れないで、あなたに畏敬の念を抱く人たちに優しい言葉をかけることを。だって彼らはすぐに大きくなって、いずれあなたの元を去ってゆくのだから。
忘れないで、側にいてくれる人に温かなハグをすることを。だってこれがあなたが持っている1番の宝であり、しかもこれをするのに1円もかからないのだから。
忘れないで、愛する人に「愛している」と伝えることを。そのときどうか、心をこめて。心からのキスと抱擁は、相手の心をも必ず深く癒してくれるから。
忘れないで、相手の手を握り、共にいる時間を慈しむことを。だってその人はいずれ、あなたの前からいなくなってしまうかもしれない。愛するため、話し合うため、そして思いを共有し合うための時間を作って。
そしてどうか、これだけは覚えておいて。人生は呼吸の数で決まるのではなく、どれだけハッとする瞬間があったかで決まる、ということを。
(文=田端あんじ)
参考元:DhiPatriots