ファストファッションブランドがシルク商品の取り扱いを始め、ずいぶんお手頃価格で手に入るようになったシルク。でも、シルクって「高級品として丁寧に大切に扱う心構え」も含めてシルクじゃない?
そんな、シルクについて “通” ぶりたい記者の心を、このところずっと捉えて離さないシルクストールのブランドあります。それは、カンボジアのメコンブルーというブランド。
■UNESCOお墨付きの最高級品
すべて手織りで作り上げるメコンブルーのストールは驚きのクオリティ。日本の第三者機関で品質検査を行った結果、百貨店で扱える基準を軽く上回る「最高級品」の保証を得ているんですって。しかも2004年、2005年には3つのデザインでUNESCOが東南アジアの手工芸品に与える賞を受賞しているのです! つまりUNESCO(ユネスコ)お墨付き!
■すべて手作業で作っている
触ってみると、すべすべとした極上の手触りと真珠のような光沢にうっとり。軽く薄手でありながら、目がしっかり詰まった生地だとわかります。丁寧に紡ぎ出した絹糸を、ドイツ製の環境に配慮した染料を使って染め上げているんですって。木組みの簡素な織り機で作っているというのが信じがたいレベル。すべて手作業で作っているため、糸を紡ぐところからストール一枚を織るのに、デザインによっては2カ月もかかる、丹誠を込めて作られたものなのです。
■読み書きのできない女性の貧困を解決するために生まれたブランド
すばらしいのは品質ばかりではありません。日本で商品の紹介と販売を手がけているNPO法人ポレポレの高橋邦之さんに聞いたところ、実はこのストールを作っているのは、貧しさから読み書きを学ぶ機会がなかったできない女性たち。
文字の読み書きができない女性は簡単なマニュアルが読めないために、仕事を得るのが難しいため、生活は困窮します。メコンブルーは、そういった読み書きのできない女性の人道支援、貧困解決のために生まれたブランドなのだというのです。
「カンボジアの伝統的なデザインに新たな息吹をふきこみ世界中に伝えたい。読み書きのできない女性に、職人として技術を身につけてもらうことで、尊厳をもたらし、貧困からも解放したい」とは創設者で、元難民のチャンタ・ヌグワンさんの言葉。メコンブルーは、読み書きのできない女性の自立を支援するための「Stung Treng Women’s Development Center」という非営利団体が作っているブランドなのです。
■織り手の生活やライフストーリーがわかる販売方法
工房内には託児所があり、食堂があり、工房に隣接して女性たちが住むシェルターがあり、職住接近かつコミュニティ型子育てができる職場環境。売り上げは奨学金、昼食の支給、職業訓練、衛生教育、診療所・幼稚園・シェルターの運営に使われます。
NPO法人ポレポレでは、カンボジアという国の現状や、メコンブルーで働く織り手のライフストーリーなどもweb上で紹介しながら販売を行なうんですって。シルクストールが縁で、カンボジアのことが身近に感じられてしまいそう。
商品自体がすばらしいだけでなく、その背景までもすばらしい。何年も何年も大事に手入れしながら使いたくなります。「『高級品として丁寧に大切に扱う心構え』も含めてシルクのよさがある」と思う方には、ぜひおすすめしたいメコンブルーのストールです。
[ブランド情報]
メコンブルー
16,380~18,900円(税込)
オンラインショップ
取材協力=NPO法人ポレポレ 高橋邦之さん
写真提供=鈴木竜一朗さん
(文、取材=FelixSayaka)
▼創業者のチャンタさんのメッセージ。品質に厳しい日本で商品を売ることができてうれしいと語っています。▼
▼織り手のお一人、ナク・ソンバイさん。たった4人で始めた創業メンバーのうちの一人。蚕の飼育、染め、織りなど、すべての工程をこなせる熟練者です。▼
▼工房では、蚕の飼育も。大切に育てられています▼
▼繭から糸をとる様子▼
▼美しく紡ぎ上げられた絹糸▼
▼環境に配慮したドイツの染料を使用して染め上げられます。希望の色が出るまで数年も試行錯誤したものもあるのだとか▼
▼機織り機▼
▼工房に子ども連れでやってくる織り手も。▼