[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、ハリウッドが忠臣蔵を描いたアクション時代劇『47RONIN』(12月6日公開)です。出演はキアヌ・リーブス、真田宏之、浅野忠信、菊地凜子、柴咲コウに、元KAT-TUNの赤西仁も出演。
キアヌ以外はほぼ日本人にもかかわらず、全編英語セリフという『47 RONIN』。日本の時代劇だからか、世界に先駆けて日本公開が決定し、六本木ヒルズでワールドプレミアを大々的に開催。激太りと報道されていたキアヌがすっきりやせてかっこよくなって登場したのをご覧になった方もいるでしょう。
さて、映画は? というと、これがもうなんちゃって時代劇みたいな映画で、超楽しい作品になっています。
藩州赤穂の藩主・浅野内匠頭(田中泯)は、赤穂を併呑しようと企む吉良上野介(浅野忠信)と妖術使いのミヅキ(菊地凜子)の策略により、吉良を斬りつけた罪で切腹を命じられてしまいます。藩主を失った赤穂藩の大石内蔵助(真田宏之)らは、浪人へと身を落とし、浅野の娘のミカ(柴咲コウ)は、吉良との結婚を無理矢理約束させられます。
浅野に忠誠を誓っていたのは赤穂浪士だけでなく、命を助けられた異端児のカイ(キアヌ・リーブス)もいました。彼は奴隷として売られてしまいますが、その彼を助けたのが大石。カイは赤穂浪士とともにミカを助けるため、また浅野の敵を討つために吉良に闘いを挑むことになるのです。
赤穂浪士の物語なので、日本が舞台のはずなのですが、いきなり異国情緒あふれる風景で、モンスターも登場して驚き! この映画は正しい時代劇ではありませんよ、ファンタジーですよ! と宣言しているようなものです。ここで普通の忠臣蔵や赤穂浪士の物語ではないのだと思ってしまえば、その後の展開もエキゾチックなファンタジーアクションとして楽しめるでしょう。みんな英語で会話していますし、女優さんたちの着物も「これ着物?」というような風変りなデザインですからね。
とはいえ、主人公カイの行動の核となっているのは、自分を救い育ててくれた浅野内匠頭と救出してくれた大石内蔵助への忠誠心。それがカイを赤穂浪士とともに敵討ちへと駆り立てているのです。そこにはちゃんと忠臣蔵のスピリットが流れており、抑えるべきところは抑えています。
ヴィジュアルがこれほど従来の時代劇とは違う作りになったのは、この映画の演出がカール・リンシュ監督だからかもしれません。この映画でハリウッドデビューをしたリンシュ監督は、CM業界では独特の映像世界を持った演出家として有名。リアリティを追求するタイプではないのです。ただ、ものすごく凝り性な監督のようで特撮技術に並々ならぬこだわりを見せ、そのせいで公開が遅れに遅れるわ、製作費は2億2500万ドル(約180億円!)にまで膨れ上がるわで、スタジオがリンシュ監督を編集作業から追い出したという噂も! しかし、それだけお金をかけた映像っていうのもまた一見の価値ありですよ。
忠臣蔵、赤穂浪士、歴史ものが大好きという人が見ると「なんてことを!」とお怒りになるかもしれませんが、もうあの忠臣蔵とは切り離して、大いに突っ込んだりして楽しんで見てください。友だちやカップルでにぎやかに見るのに最適な映画です。
(映画ライター=斎藤 香)
『47RONIN』(2D・3D同時公開)
(2013年12月6日公開)
監督: カール・リンシュ
出演: キアヌ・リーブス、真田広之、浅野忠信、菊地凛子、柴咲コウ、赤西仁、田中泯、 ケイリー=ヒロユキ・タガワほか
(C)Universal Pictures