[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、先日発表された2013年度のアカデミー賞でアニメーション賞を受賞した『アナと雪の女王』です。宮崎駿監督作『風立ちぬ』も候補にあがっておりましたが、下馬評では『アナと雪の女王』が圧勝ムードで予想通りの受賞となりました。
もちろん全米では大ヒットどころかディズニーアニメーション史上最高の興行収入を記録! サントラもビルボードNo.1になるなど、何かと話題になることしきり。「どんなに凄い映画なのよ!」と思い、試写を見てまいりましたよ。
【物語】
仲良し姉妹のエルサとアナはいつも一緒でした。しかし、エルサには触れるものを凍らせる力があり、そのせいでアナを傷つけてしまいます。彼女は愛する妹を傷つけたことに苦悩し、引きこもり、離れ離れのまま姉妹は大人になっていきます。
やがて王と王妃が事故で亡くなり、王国をエルサが継ぐことになります。しかし、彼女の氷の力は、国民を怖がらせ、王国を永遠の冬にしてしまいます。いたたまれなくなったエルサは王国を飛び出し、ひとり氷の宮殿を作り、雪の女王に。
アナは姉のエルサを助けるため、また王国を元に戻すために、氷の宮殿へと向かいますが……。
【アンデルセンの原作を大胆にアレンジ】
アンデルセン童話「雪の女王」が元ネタになっている本作。「雪の女王」は少年カイと少女ゲルダの物語だけど、ゲルダのキャラクターはそのままアナとして生まれ代わり、クールな雪の女王は、より人間味あふれるキャラクターになって、エルサになりました。
そして、このふたりを姉妹にすることで、家族愛を描くアニメーションに。まさに進化した「雪の女王」というわけですね。本家の世界観を失わず、より多くの人に共感してもらえるようにとアレンジされた脚色は本当に素晴らしいです!
また元が童話だから、とてもわかりやすいのですよ。例えば宮崎駿監督作『風立ちぬ』は子供にはわかるかな……と思ったりしますが『アナと雪の女王』は子供から大人まで楽しめます。「大人には物足りないのでは?」と思うでしょう。いやいや、ちゃんとロマンスも入っていますから。それも定番の白馬に乗った王子ではなく、友だちから恋人へ……みたいな今どきのノリがあり、そこが大人女性の心にもヒットしそうな気がするんですよねえ。
【キャストの歌唱力に驚き】
字幕版でアナの役はクリステン・ベルが演じています。「知ってる!」という人は海外ドラマ通かも。ベルはドラマ「ヴェロニカ・マーズ」の主演女優。まさか歌えるとは! 彼女の美声には驚かされました。
そしてアカデミー賞主題歌賞を受賞した「Let It Go」を熱唱するエルサを演じたのはイディナ・メンゼル。ミュージカル「レント」「ウィキッド」にも出演しているミュージカル界のスター女優です。
ほかのキャストもブロードウェイのスターばかりで、歌唱シーンは本当に迫力あるわ、ワクワクするわで、ずっーと歌っててほしいと思うほど感動的です。
ちなみに日本語吹き替え版でアナを演じるのは神田沙也加。最初にその名を聞いたときは「ふ~ん」という感じでしたが、歌声を聞いてビックリ。さすが松田聖子の娘、歌姫のDNAをしっかり受け継いだ透明感のあるのびやかな声と演技力で「す、すごい」とビックリです。エルサを演じるのは松たか子。数々の舞台経験もあり、歌手でもある彼女ゆえに、余裕を持ってエルサを演じていて安心感があります。
【ディズニー映画初の女性監督!】
『アナと雪の女王』は、クリス・バックとジェニファー・リーの共同監督です。クリスはベテラン監督ですが、ジェニファーは『シュガーラッシュ』の脚本を認められたばかり。本作には当初脚本として参加していましたが、物語への深い理解から、共同監督に大抜擢されたそう。ちなみにディズニーアニメの長い歴史の中で、女性監督は初!
そしてクリスと組んだジェニファーは『アナと雪の女王』を大ヒットに導き、アカデミー賞まで受賞してしまうのだから、これってシンデレラストーリーと言っても過言ではないでしょう。今後も数々のオリジナル脚本の映画化が進んでいるそうなので、ジェニファー・リーの名前は覚えておいた方がいいかもしれません。
アメリカには数々のアニメーションが作られる会社があり、本家のディズニーは最近ちょっと押され気味でしたが『アナと雪の女王』では、その底力を大発揮! やはりディズニーはキング・オブ・アニメーションであると証明したような気がします。
歌とファンタジーと家族愛とロマンを楽しめる超贅沢なアニメ『アナと雪の女王』。この映画を見たあとは「Let It Go」が頭で鳴り響くこと必至。気づいたらサビを口ずさんでいる……なんてこともありですよ。
執筆=斎藤 香(c) Pouch
『アナと雪の女王』
2014年3月14日公開
監督: クリス・バック
ジェニファー・リー
声の出演: クリステン・ベル、イディナ・メンゼル、ジョナサン・グロフ、ジョシュ・ギャッド、サンティノ・フォンタナ、アラン・テュディックほか
(日本語吹替版): 神田沙也加、松たか子、原慎一郎、ピエール瀧 、津田英佑、多田野曜平、安崎求ほか
(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.