季節は春。花々が芽吹き、いよいよパステルカラーやシャーベットカラーが映える季節がやってまいりますよぉ!
……しかし、ファッション界は秋冬。もちろん昨年からの秋冬がまだ続いている、というわけではなく、次のシーズン、つまり今年から来年にかけての秋冬のことでございます。
去る3月5日までフランスで行われていた、2014-15秋冬パリコレクション。2日に発表されたのは『KENZO』のショーでした。今回同ブランドのセットデザインと音楽を手掛けたのはなんと、映画界の巨匠デヴィッド・リンチ氏。
コレクション自体、リンチ氏が作り出す独特の世界観からインスピレーションを得ているそうなのですが、そこに本人が介入するというのはレア。しかもそれが、カリスマ性が高く、また奇才としても広く知られるリンチ氏なのだから、なおのこと! このとびきり熱いニュースに、ファッションフリークのみならず映画フリークまでもが、ざわざわしていたとかいないとか。
ダークなカラー、そして照明が、深い闇、あるいは水の底をイメージさせる空間。ループし続ける風の音のような、そして幻聴のような音楽。
迷路のように入り組んだランウェイの中心にしんと居座る、巨大な顔のオブジェ。耳の奥で増幅し続ける音を助長するかのような、歪んだ鏡。あの名作、『ツイン・ピークス』の文字をモチーフにした模様が現れる、といった演出もニクイかぎりです。
どこか奇妙で、じわじわと鳥肌が立つような不気味なムード。まるで、心の奥底に潜んでいる闇の中をさまよっているかのように歩くモデルたちもひっくるめて、なにからなにまでリンチ色。
それなのに、決してブランドの色を浸食していない絶妙なバランスは、見事としか言いようがありません。これもひとえに、今回の奇跡のコラボが、『KENZO』デザイナーであるウンベルト・リオン氏とキャロル・リム氏が長年温め続けてきた計画だったからこそなのかも。
人の心をどこか不安にさせる、これこそがリンチ作品の特色であると記者(私)は思います。こういった世界観が好きな方にとってはきっと今回のショー、たまらないはず。1本の映画を観ているかのような4分間を、それではごゆっくりお楽しみくださいませ。
参考元:Kenzo 、YouTube
執筆=田端あんじ (c)Pouch