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アスペルガー症候群の青年をポップに描いたスウェーデン映画『シンプル・シモン』【最新シネマ批評】

2014年5月3日

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、スウェーデン映画『シンプル・シモン』(5月3日公開)です。かわいいタイトルでビジュアルもかわいらしいこの映画ですが、実はなかなか画期的な映画でもあります。

なぜなら主人公はアスペルガー症候群の青年シモン。このようなテーマの作品はどうしても重くなりがちですが、この映画はアスペルガー症候群の難しさを描きながらも、どこか突き抜けた明るさがあり、こうやって病とお付き合いできたら、もしかしてもっと肩の力は抜けるのでは、楽になるのでは? と思わせるのです。

【物語】

アスペルガー症候群のシモン(ビル・スカルスガルド)は、気に入らないことがあると宇宙船のようなドラム缶の中にこもってしまいます。母親から助けを求められた兄(マルティン・ヴァルストロム)は、シモンの一番の理解者。彼は恋人と同居する家にドラム缶ごとシモンを連れてきますが、彼女はアスペルガーの症状が理解できず、家を出てしまいます。恋人を失い落ち込む兄の為に、シモンは兄の新しい恋人探しを始めるのですが……。

【アスペルガー症候群の青年から見た世界】

アスペルガー症候群は、高機能自閉症とも言われています。症状は様々ですが、この映画のシモンの場合、人に触れられることが嫌い、いつも同じ服を着て、同じ時間に起きて、曜日ごとに同じメニューの物を食べるのがお約束です。他人の気持ちを読み取ることができず、変化を嫌うので、ちょっとでもいつもと違うことが起こるとパニックを起こしてしまうのです。でも生きている限り、同じことを繰り返すことは難しく、いつもと違う日常や、かかわったことのない人との出逢いが、シモンの物語を転がしていきます。シモンにとっては迷惑な変化が、この映画のストーリーなのです。

この映画の魅力は、アスペルガー症候群の青年を描きながらも、彼を過保護に扱わないところです。可哀想でもないし、同情もしていない。兄の恋人なんて「私、絶対無理!」みたいなことを言って、思い切り迷惑そうでしたからね。シモンというひとりの青年が兄の恋人探しという冒険をし、行き先で出逢う人との交流をユーモラスに描いているところが素敵なのです。そりゃ話が通じなかったり、トンチンカンになったりもしますよ。でも笑ったっていいんです。だってシモン、おもしろいんだから!

【監督は語る、誰にでもシモンらしさがある】

アンドレアス・エーマン監督は、シモンと彼の世界をスクリーンに焼き付けることに成功しました。

「私はこの映画で、シモンの滑稽で単純だけど複雑というまったく相反するキャラクターを視覚的な世界に結びつける機会を得ました。そして、この映画はシモンについての物語にしたいと思いましたね。彼の面倒を見る兄でもなく、彼とうまくいかない両親でもなく、シモンの視点で世界を見る機会を与える映画にすることを望みました」

まさにその通りの映画になっています。戯画化しているとも言えるかもしれませんが、映画にシモンに対する監督の愛情がいっぱいつまっているのは見ればわかります。

「私たちの中には、アスペルガー的な傾向が存在していると思います。それが私たちをシモンのような特別な存在にするのです」

つまり、シモンのような愛すべき個性が誰にでも備わっているということでしょうかね。ちなみにエーマン監督はなんと25歳でこの映画を演出しました。おそるべき才能! 北欧は『裏切りのサーカス』のトーマス・アルフレッドソン監督もいますし、映像センスが抜群の監督がときどき飛び出してくるんですよね。アンドレアス・エーマン監督も名前を覚えておいた方がいいかもしれません。

【北欧のセンスあふれる美術にも目が釘付け!】

映画の見どころはシモンの個性だけではありません。みんなが大好きな北欧のインテリアが満載。壁紙が特に素敵で「どこで売っている?イケアにあるのかな??」と思ったりしました。家具や照明器具、ファブリックなどいちいち気になってしっかりチェックしてしまいましたよ。シモン着用の赤青ジャージもかわいいし、シモンが仲よくなるイェニファーという女性がしているピアスもかわいいんです。

そのイェニファー、シモンの風変りな行動も全く意に介さず、アスペルガーだから何?みたいな態度でなかなかいいキャラです。家が凄く散らかっていて、あけっぴろげな性格で、シモン以上に風変りかも? でもシモンに対してまったくかまえず、大らかに接する彼女を見ていると、シモンは親とはうまくいかないけど、彼女みたいに接してくれる人もいるのだから、人との出逢いって大切だなとしみじみ思ったりしましたよ。

北欧好きは必見、また心がほっこりするかわいい映画を見たい人も必見の『シンプル・シモン』。この世界観、見ればきっと好きになりますよ。
執筆=斎藤 香 (c) Pouch

『シンプル・シモン』
2014年5月3日公開 ユーロスペース渋谷ほか全国順次公開
監督&脚本: アンドレアス・エーマン
出演: ビル・スカルスガルド、マルティン・ヴァルストロム、セシリア・フォルス、フィ・ハミルトン、ロッタ・テイレ
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▼シンプル・シモンの予告です!

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