[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは『X-MEN:フューチャー&パスト』(5月30日公開)です。大人気シリーズの『X-MEN』ですが、『ウルヴァリン:SAMURAI』を公開してそれほどたってないのに、もう本家の『X-MEN』が登場かとビックリ! ウルヴァリンは大忙しです。
でも今回の『X-MEN:フューチャー&パスト』は、ヒュー・ジャックマンだけではありません。もうスター総出演! ヒジョーに派手、ヒジョーににぎやかですが、内容も練りに練られているのです。
【物語】
2023年の地球。バイオメカニカル・ロボット、センチネルの攻撃でX-MENだけでなく地球全体が滅亡の危機を迎えています。この最強の敵センチネルを倒すには、このロボットが作られる以前にタイムワープして、開発を阻止すればいいと、ミュータントの魂を過去に飛ばす事ができるX-MENのひとりキティ・ブライド(エレン・ペイジ)は、ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)の魂を1973年に飛ばします。
そして、2023年の魂を宿らせた1973年のウルヴァリンは、若き日のマグニートー(マイケル・ファスベンダー)とプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)を和解させて、どんな姿にも代えられるミスティーク(ジェニファー・ローレンス)のDNAを使ったセンチネル計画を阻止しようとするのですが……。
【アベンジャーズ的な派手さに重厚な世界観をミックス】
アメコミのスター競演作『アベンジャーズ』に対抗したのか思うほど、今回の『X-MEN:フューチャー&パスト』は華やかです。『X-MEN』の物語そのものは、マイノリティの苦悩を描いて少々孤独の影があり、そこが魅力でもあるのですが、それをふまえた上で、スターたちのきらめきを散りばめた感じでしょうかね。ヒュー・ジャックマン、ジェニファー・ローレンス、マイケル・ファスベンダー、ジェームズ・マカヴォイ、ハル・ベリーなどなど、アカデミー賞クラスのスターが出演しているのです。話は重くても映像はド派手! というわけです。
ただ『アベンジャーズ』と違うのは、ヒーロー祭りのような映画ではないこと。『X-MEN』はウルヴァリンが主役だと思いがちですが、前作の『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』と本作はマグニートーとプロフェッサーXの存在感が強いです。でもそのボスキャラ二人の物語は重厚だし、若き日の二人を演じているのがファスベンダーとマカヴォイなので華やかかつ見応えがあります。
【アクション俳優を起用しない主義】
『X-MEN』シリーズに最初からかかわっている本作のブライアン・シンガー監督は、『X-MEN』第一作目からアクションスターと言われる俳優は起用していません。プロデューサーのサイモン・キンバーグはキャスティングについてこう語っています。
「ブライアン・シンガー監督は最初の『X-MEN』から演技派の俳優を起用し、それがこの映画を成功へと導いているんだ。ジャンルにふさわしいからとアクション系の俳優を起用せず、そのかわりイアン・マッケランやパトリック・スチュワート、ヒュー・ジャックマンのような舞台経験があって力量ある役者を選んだ。若手でもジェニファー・ローレンス、エレン・ペイジ、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー……演技派と言われる俳優ばかりだ。これほど幅広く受賞歴があるキャストを起用したSFアクション映画はないんじゃないかな」
『X-MEN:フューチャー&パスト』のような荒唐無稽な映画は、下手すればB級映画になってしまいますが、そうならなかったのはシンガー監督の演出と少数派のミュータントが苦しみながら闘うストーリーの核を演技派たちがしっかり把握していたからでしょう。
【ジェニファー・ローレンスの青い女優魂】
ミスティーク演じるジェニファーは、8割のシーンで顔から手足の指先まで真っ青です。青い皮膚はボディラインくっきりでヌードのような姿。アップにならないとジェニファーとわかりません。でもイエローの瞳は常に怒りと悲しみを湛え、ミスティークを生きているなあと思わせますからね、さすがオスカー女優です。ちなみにミスティークは大人気で、ウルヴァリンのようなスピンオフ映画ができるかもしれないとの噂、それは楽しみですね!
物語は2023年と1973年を行ったり来たりするので、ちょっと混乱してしまうかもしれません。あらかじめストーリーをサクっと頭に入れて鑑賞することをオススメ。『X-MEN:フューチャー&パスト』は男子も大好きなタイプも映画だから、デートムービーにも最適ですよ。
執筆=斎藤 香 (c) Pouch
監督:ブライアン・シンガー
出演:ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ハル・ベリー、ニコラス・ホルト、エレン・ペイジ
(C)2014 Twentieth Century Fox.