昨年の「商店街ポスター展」、そして先月Pouchでも紹介した「女川ポスター展」の仕掛け人、奇才・日下慶太が、今度はアーティストのMVを監修したらしいんです。それも読者モデル(以下、読モ)出身の女の子だとか。
「あの日下さんが、読…モ……だと…??」
と、半信半疑ながらMVを観てると、さすが日下さん、やっぱり一筋縄じゃいかない……。
なんでも、中田ヤスタカ(CAPSULE)プロデュースによる三戸なつめのデビュー曲「前髪切りすぎた」のMVを、11人のクリエーターに勝手につくってもらうという仕掛けをしたんだって。つまり、三戸なつめのデビュー曲はMVが11種類もあるってこと。
さっそく、その辺の話を日下さんに聞いてみたよ!
【色んな作家が自由にMV撮ったらオモロイなーって思って】
──今回MVをたくさん作ったのは、なんでですか?
日下:まず「商店街ポスター」を見たっていうことで、ご依頼をいただいたんですよ。なんで、商店街ポスター展みたいにたくさんの人が自由にMVを撮ったらオモロイなーって思って、知り合いの映像作家やAD(アートディレクター)に声をかけて。
──僕は「落書き編」が好きですが、日下さんはどのMVが好きですか?
日下:むずかしいなあ……、全部に思い入れがありすぎて。「みんなちがってみんないい」という、あいだみつを的涅槃(ねはん)に達してます。
──(笑)。では涅槃に達したところで、MVを観てみましょう!
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■学園篇(監督:伊勢田勝行)
日下:この伊勢田監督はねー、すごい人で、これパソコンを使わないで作ってるんですよ。
──コマで撮って、ということですよね……、すごい。
日下:都築響一さんいわく「生きているうちに見つかってしまったヘンリー・ダーガー」です。
日下:このMVの撮影は、とりあえず人をいっぱい呼んで、当日まで内容を決めてなくて(笑)。よく形にできたなと感心してます。
──撮影はどこでしてるんですか?
日下:奈良の山の中ですね。撮影は楽しかったですよ。ちなみに監督のコタケマンは、「セルフ祭」を始めた人です。
日下:監督の、めりんぬちゃんはスタイリストやねんけど、グラフィック作品も作っていてセンスあるなと思ってて。
──スタイリストなんですか。確かに服が独特ですね〜。
日下:女子がカワイイと思う視点になってると思う。
日下:この監督さんはVJとかグラフィックとかパフォーマーとかしてて。
──なんかカッコイイですね!
日下:実際に映像を撮るのは初めてやったけど、このMVは人気ありますね〜。
──あ、クレイアニメだ。
日下:この人らは夫婦でクレイアニメ作ってて、NHK「みんなの歌」の作品も作ってます。
──なんかドラマっぽいですね。
日下:映画っぽいでしょ? この監督さんはインディー映画監督なんです。ストーリーがあって、テンポも良い。撮影カットも一番多かったんちゃうかな。
──僕はこれが好きです。面白い!
日下:これは会社の後輩の優秀なADが作ってます。絵も自分で描いてるんですよ。
──このMV、三戸なつめさんが可愛く描かれていると思うんですけど。
日下:そうそう、男から見た可愛さになってますよね。監督の大熊さんは、CMディレクターなんです。
日下:作家性あふれる作品やね。実は会社の後輩のADで、僕は彼が卒業制作で作った映像作品を観たことがあって。
──独特の作品だったんですか?
日下:そうそう。その小路の卒業制作作品は、中田ヤスタカさんも知ってたらしくてビックリして。
日下:この監督のbenちゃんは、三戸ちゃんと同じような髪型で。
──じゃあ感性も近いんですかね。
日下:面白くてかわいくて、三戸ちゃんのイメージに一番合ってると思う。
日下:この監督さんは、グラフィックとか映像とか作ってる人で。
──この方も前から知ってたんですか?
日下:そうそう。「neco眠る」ってバンドの『ENGAWA DE DANCEHALL』って曲のMVがオモロくてね。
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【グラフィックは商店街ポスター風!】
──MV11本一気に観ましたね。なかなか持っていかれますね…。
日下:あとグラフィックも僕が担当してるんですよ。
──あ、商店街ポスターみたいですね!
【次は自分の作品を作りたい】
──11本はさすがに見応えがありますね〜。さて、商店街、アーティストときましたが、次は何を仕掛けたいですか??
日下:仕掛けすぎて疲れました(笑)。何も仕掛けず、引き蘢って自分自身の作品を作りたいです。今年中には自分の写真集を出したいなあ。
──写真って「隙ある風景」みたいな?
日下:そうそう。写真集作って個展したい。
──それは楽しみですね〜。では最後にコメントなどあれば。
日下:映像を見てCD買って前髪切ってね! あと映像つくってみたい人は売り込んできて!
<日下慶太>
1976年大阪生まれ。チベット、カシミール、アフガニスタンなど世界中を旅をして広告会社へ入社。商店街のおもしろいポスターを制作し町おこしにつなげる「商店街ポスター展」の仕掛け人。コピーライターとして勤務する傍ら、写真家、大阪一のアホ祭り「セルフ祭」顧問として活動している。ツッコミたくなる風景ばかりを集めた『隙ある風景』日々更新。都築響一氏編集「ROADSIDERS’ weekly」でも写真家として執筆中。佐治敬三賞、東京コピーライターズクラブ最高新人賞、朝日広告賞、ゆきのまち幻想文学賞他多数。
参考:日下慶太, セルフ祭り, 隙間ある風景, neco眠る(ENGAWA DE DANCEHALL)
取材・執筆=今村トール (c)Pouch