[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかからおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、「キック・アス」のマシュー・ボーン監督とマーク・ミラー原作による、愉快痛快な英国アクション映画『キングスマン』(2015年9月11日公開)です。
主演はコリン・ファース。アカデミー賞受賞作『英国王のスピーチ』で主演男優賞を受賞した名優です! その彼が、”アクションもイケる” というのを証明したのが本作なのです。
【物語】
母と二人暮らしのエグジー(タロン・エガートン)は、車を盗み、無謀運転で刑務所へ。彼は幼い頃、亡き父が得た勲章の裏に刻まれていた言葉 “困ったときは電話してくれ。合言葉はブローグではなくオックスフォード” を思い出し、刑務所から出るために電話をします。
助けてくれたのは高級テーラー “キングスマン” のハリー(コリン・ファース)。実は彼、表向きは仕立て職人ですが、実は国際的な独立諜報機関。つまりスパイであり、彼にとってエグジーの父は命の恩人なのです。
ハリーはエグジーに、秘密諜報機関“キングスマン”に欠員があるから「新人試験を受けないか」と誘います。そして参加することにしたエグジーですが、それは命懸けのテストだったのです。
【新人スパイの成長物語】
『キングスマン』は、まさに英国らしいクラシックさに、エンターテインメントにかかせないテンポと華やかさを加味したスパイ映画です。でもこの映画の魅力は、スパイ描写だけではありません。新人スパイ、エグジーの成長物語にもなっているところが良いのです。
エグジーはチンピラみたいな若者だけど身体能力が抜群。その長所を活かした修行に必要なのは心技体。ただ体が動き、技術を習得するためではダメなわけで、エグジーはメンタルの強さも学んでいきます。
師匠はハリー、教え子はエグジー。師匠と師弟の関係を描いた映画はたくさんありますが、この映画はどこか『スター・ウォーズ』のオビ=ワンとアナキン、ヨーダとルークを思い出させます。
師匠と師弟の修行の日々は、胸躍るものですね~。特にこの映画はスパイ修行ですから、小物が必須。傘や靴があっという間に武器になるんですよ。高級テーラー “キングスマン” のオシャレな店内には、スパイ道具が揃っていて実に楽しいです。
【コリン・ファースがアクションスターに?】
それにしても、コリン・ファースがアクションに挑戦するとは驚きです。ブリティッシュスーツに身を包んだ彼のアクションは、肉体のぶつかりあいのような汗臭さ皆無! 実にクールな身のこなしでキレッキレのアクションを見せ、本当にホレボレします。
マシュー・ヴォーン監督はコリンのキャスティングについてこう語っています。
「いつもと違う彼を見ることができたら、きっと楽しいと思ったんだ。彼は何カ月にも及ぶトレーニングに取り組んでくれたよ。彼には “この映画にはトレーニングが必要です。そして撮影の前にテストをします” と伝えたんだ。彼はテストに見事に合格してくれたよ」
これまでは肉体で勝負するアクション俳優と芝居で勝負する演技派俳優は、それぞれ別枠で活躍しているイメージがありましたが、本作のコリン・ファースといい『96時間』シリーズのリーアム・ニーソンといい、演技派がアクション枠にインして結果を残しているという事実。やっぱり彼らも心は男子! 血沸き肉躍るアクションに燃えるのでしょうか。
【最強の悪役はIT長者!】
エグジーの成長物語と並行してハリーの宿敵として登場するのがサミュエル・L・ジャクソンが演じるヴァレンタイン。彼はIT技術を駆使して、人々がお互いに殺し合いをするように仕向けていくのです。
手を汚さずに殺戮を繰り返すヴァレンタインのモデルは、なんとスティーブ・ジョブズ! ヴァレンタイン役について、監督はこう語っています。
「億万長者でそのブランドと技術が全世界に影響を与える男が、悪に傾いたら恐ろしい強敵になるだろう。そういった意味でヴァレンタインはジョブズが一番近い」
確かにジョブズレベルの天才が悪の道に入ったら、取り返しがつかなくなりそう。誰も太刀打ちできませんよね。
これからは英国アクションが熱い! 「007」を思わせるオシャレ感と洒落の利いたセリフ、アクションが満載の『キングスマン』。これなら彼氏も大喜び、デート映画にも最適ですよ。
執筆=斎藤 香(C)pouch
『キングスマン』
2015年9月11日より、TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー
監督:マシュー・ヴォーン
出演:コリン・ファース、マイケル・ケイン、タロン・エガートン、マーク・ストロング、ソフィア・ブテラ、サミュエル・L・ジャクソンほか
(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation