【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。
今回ピックアップするのは、池井戸潤のベストセラー小説の映画化『空飛ぶタイヤ』(2018年6月15日公開)です。累計170万部を突破した小説の映画化で、主演はTOKIOの長瀬智也。そして脇を固めるのはディーン・フジオカ、高橋一生、という泣く子も黙るイケメン俳優陣です! 目にも嬉しい出演陣ですが、内容もわかりやすくて女性でもスッと映画の世界に入ってしまいます。では物語から。
【物語】
1台のトレーラーが脱輪。宙を舞ったタイヤは歩道を歩いていた親子を直撃し、母親(谷村美月)は亡くなりました。整備不良を疑われた運送会社の社長、赤松(長瀬智也)のもとには刑事(寺脇康文)が捜査に入ります。事故を起こしたトレーラーの整備担当は若い整備士の門田(阿部顕嵐)。いい加減な整備をしていたのかと怒る赤松ですが、彼はきちん記録をつけており、事故車の整備は完璧でした。ではなぜ?
赤松はトレーラーに問題はなかったのかと、ホープ自動車に調査を依頼しますが、カスタマー戦略課長の沢田(ディーン・フジオカ)は相手にしません。でもそこには沢田も知らない闇が潜んでいたのです。
【長瀬智也が新境地を開拓!】
元銀行員である池井戸潤さんの小説は、企業小説が多く、サラリーマンの必読書のような印象があります。しかし、映画化された『空飛ぶタイヤ』の主演はジャニーズの長瀬智也。「あの長瀬さんが運送会社の社長役?」と、最初は思ったのですが、これがピッタリだったんです。
トレーラー本体の構造に欠陥があり、それが脱輪に繋がったのではないかと思った社長は、何度断られてもホープ自動車にかけあい、泥臭く大手企業にぶつかっていきます。テレビで見る長瀬さんの大らかで正直で人の良さそうなキャラが、社員も家族だと思っている人情に厚い男・赤松社長のキャラにかぶって仕方ありませんでした。従来ならば、長瀬さんのようなイケメンが演じるような役ではないかもしれませんが、だからこそ逆に新鮮で良かった。なんだか新しい長瀬智也に出会えた気がします。
【心中で熱い正義の炎をたぎらせるディーン様!】
ホープ自動車のクールな課長・沢田を演じるディーン様も魅力を炸裂させています。
上層部の怪しい動きを察知した車両製造部の小松(ムロツヨシ)と、品質保証部の杉本(中村蒼)と接触。自分の知らないところで不正が行われていると疑いを深め、次第に赤松社長に歩み寄っていくのです。それが自身のキャリアを台無しにするとしても……。
赤松社長をクールに突っぱねる姿を見せつつ、徐々に内なる正義に目覚めて苦悩するディーン様。たまりません!
【不正に斬りこむ銀行員をサラリと演じる高橋一生】
一方、高橋一生さんが演じるのはホープ銀行・本店営業本部の井崎です。しつこく追加融資を求めてくるホープ自動車を怪しむという役どころ。
赤松社長や沢田課長とのからみがほとんどないのが残念ですが、実は巨悪の根源にダメージを与えるのは井崎なんですよ~。それも銀行員らしく実にスマートなやり方で。
彼の見せ場は映画後半、一生ファンはスクリーンを凝視していてください。
【豪華キャストが勧善懲悪を盛り上げる~】
映画『空飛ぶタイヤ』は善悪がきっちり分かれているので、どの年代の方が見てもわかりやすくできています。
企業の不正をどう暴いて、どう決着をつけるのかというドラマは見応えがあるし、何より助演陣も豪華! 赤松夫人役は深田恭子さん、自動車会社には前述のムロさんと中村蒼さんが出ているし、不正を暴こうとする記者に小池栄子さんほか、佐々木蔵之介さんもちょっとだけ出演しています。
そうそう、長瀬さんのジャニーズの後輩、阿部顕嵐くんもかなりのイケメンで、赤松社長を信じてついていく一本気な若い整備士を熱演。
内容はサラリーマンが大好きな池井戸ワールドですが、キャスト男子のヴィジュアルがハイレベルな上に物語もわかりやすいので、女性も大いに楽しめます! 女子同士で見に行って、イケメン軍団に心の中でキャアキャアいうのにも最適かもしれません。
執筆=斎藤 香 (c)Pouch
『空飛ぶタイヤ』
(2018年6月15日より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー)
監督:本木克英
出演: 長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子、岸部一徳、笹野高史、寺脇康文、小池栄子、阿部顕嵐(Love-tune/ジャニーズJr.)、ムロツヨシ、中村蒼ほか
(c)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会