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【本音レビュー】もっとユーモアがほしかった! 話題作『未来のミライ』は現実感たっぷりの家族映画でした

2018年7月25日


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回、ピックアップするのは、細田守監督の最新作、アニメ映画『未来のミライ』(2018年7月20日公開)です。『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』などで人気の細田監督作品。では物語から。

【物語】

都会に住むある一家。4歳のくんちゃん(声:上白石萌歌)のもとに生まれたばかりの妹がやってきました。でも、くんちゃんはおもしろくありません。お父さん(声:星野源)もお母さん(声:麻生久美子)も、妹の世話にかかりっきりなので、甘えん坊のくんちゃんはどんどん駄々っ子になっていきます。

そんなある日、くんちゃんのもとにセーラー服の女の子が現れました。彼女の名前はミライちゃん(声:黒木華)。くんちゃんの妹の未来の姿でした。そして、ミライちゃんはくんちゃんを、時を超えた冒険へと連れ出すのです。

【リアリティはあるけどユーモアがない】

この映画で描かれる家族は、とても正直で、綺麗ごとが一切ありません。くんちゃんは、両親に相手にされずに孤独のあまり暴れますし、お母さんは育児疲れで愚痴っぽいし、お父さんは妻と子供の板挟みにあって困り果てています。かわいい赤ちゃんが家に来たのに、幸福感がないのです。

細田監督はインタビューで「4歳の男の子の目から見た家族の物語を描きたかった」また「家族だから何も言わなくてもわかりあえるなんてありえない。家族だからわからないことがある」と語っています。監督にもお子さんがいるので、実体験に基づいているのでしょう。この映画は、そんな不器用な家族が、ぶつかりあう姿を描いています。まさに、現代の家族あるあるなのです。

しかし私は、この家族のいざこざを見ているうちに気持ちが沈んでしまいました。なぜならこの家族像は、あまりにもリアルすぎて、ユーモアが足りないからです。
二人の幼い子供のいる家庭で、育児・家事・仕事をまわしていくのは、夫婦が協力しても大変なのはたしかです。でも、厳しいのは現実だけで十分。

映画なのですから、お父さんの家事育児のおかしな失敗や完璧主義のお母さんのちょっと抜けた一面など、キャラを魅力的に見せるような演出が見たかったなと。そういうユーモラスな描写がまったくないので、映画を見ていても、あんまり楽しい気持ちになれないのです。

【ミライちゃんは救世主になれたのか?】

でも、そんな風にリアルにぶつかりあう家族を救うのがミライちゃん。彼女はくんちゃんと一緒に時を超え、家族の過去へと向かいます。そこにはお父さんやお母さんの若い頃の姿があり、くんちゃんは「誰にでも過去があり、人は成長すること」を知り、お兄ちゃんになっていくのです。

ミライちゃんの登場シーンはとっても鮮やかです。これから物語が動き出す感が満載でワクワクします。でも意外とミライちゃんは存在感が薄かった。くんちゃんの駄々っ子ぶりが強烈なので、くんちゃんに食われちゃったように感じました。彼女にはもっと活躍してほしかったです。

【リアルな体験が裏目に出たのかも?】

本作は、細田監督自身が子育てを経験したからこそ、そのリアルにこだわり過ぎて、フィクションの楽しさやユーモアが入る隙間がなくなったのではないかと思いました。知り過ぎていたこからこそ現実に縛られたのかもしれません。

でも映像はとても綺麗です。後半に登場するレトロな駅のシーンなどは、切り取って飾っておきたいほど幻想的!、大きなスクリーンで見るに値するヴィジュアルで、細田監督作の映像の美しさは大いに堪能いたしました。

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

『未来のミライ』
(2018年7月20日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:細田守
声の出演:上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、吉原光夫、宮崎美子、役所広司、福山雅治ほか
(C)2018 スタジオ地図

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