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【本音レビュー】土屋太鳳と芳根京子は “優等生女優” の殻を破れたか? 映画『累 -かさね-』は才能と美を奪い合う女同士の愛憎劇です

2018年9月11日


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは土屋太鳳と芳根京子が共演する『累 -かさね-』(2018年9月7日公開)。キスをすると相手の顔と入れ替わる不思議な口紅を利用して、自分のコンプレックスを払拭し、完璧になろうとする女ふたりの愛憎劇で、松浦だるまの同名漫画の実写映画化です。

NHK連続テレビ小説のヒロインを演じたこともある2人が、朝ドラ出身の優等生女優の殻を破る大熱演と話題なので、さっそく公開日初日に見てきました! では物語から。

【物語】

片頬に口から耳へ裂けるような傷を持った累(芳根京子)は、容姿に強烈な劣等感を抱いていました。その彼女が大切にしていたのが、亡くなった女優の母(檀れい)にもらった1本の口紅。それはキスをすると相手の顔と入れ替わることができるという不思議な口紅でした。


ある日、累は舞台演出家の羽生田(浅野忠信)と知り合い、女優のニナ(土屋太鳳)を紹介されます。羽生田は、美人だけど演技力に問題があるニナの代役に累を抜擢し、その日から、累とニナはたびたび顔を交換するように……。

【累とニナのスリリングな悪魔の契約】

美しいけど演技に難ありの女優と演技力は神レベルだけど顔に傷のある女。お互いに自分にないものを持っていることで、入れ替わりの契約を交わすのです。すると、美しくて演技力も抜群の女優が誕生! 演劇界の寵児になっていくわけですよ。

顔を交換するときに太鳳ちゃんと芳根さんは熱烈なキスをするので、「もしや累とニナは百合な関係に~」と思ったのですが、百合っぽさはあまりありませんでした。なぜなら二人とも、自分のことしか考えていない。自己顕示欲の塊みたいな女だったからです。「アンタの顔がほしい」「アンタの才能がほしい」と、お互いが野心をむき出しにし、精神的にぶつかり合いながらも求め合っているという実に複雑な関係だったのです。

【体当たりの大熱演は間違いないけど~】

女優二人の演技合戦は楽しかったです。太鳳ちゃんは、演技が下手な素のニナとニナの顔の累を実にうまく演じ分けでいましたし、芳根さんも、陰気な累と、累の顔をした高飛車なニナの演じ分けが上手く、それぞれちゃんと累とニナとして二役を演じ切っていました。特に太鳳ちゃんは、劇中劇「かもめ」「サロメ」の主演もこなし、特に「サロメ」では圧巻のダンス・パフォーマンスを披露。

この劇中劇を含めると。太鳳ちゃんは一人四役を演じ切ったということになるんですね! 土屋太鳳のアスリート級の体力と表現力と根性には感服つかまつりましたよ。

しかし、太鳳ちゃんと芳根さんは優等生の殻を破れたか……と言われたら、やっぱり良くも悪くも一生懸命で優等生が透けて見えるなあと。「ヤバイよ太鳳ちゃん、ヤバイよ、芳根さん!」と、イメージが崩れる~と思うくらいの累のニナへのドロドロのエグい暴走が見たかった。これまでの殻を破り、一線を超えられる題材だったんじゃないかと思うのですが、どこかでイメージを守るブレーキをかけている印象がありました。狂気を感じるまでには至らなかったなあというのが本音です。

【美醜の差をもっとつけてほしかった!】

また個人的には、芳根さん演じる累は醜いという設定なのに、醜さが傷だけなのが物足りなかったです。傷以外はすごく可愛い顔なんですもん。累とニナはもっと美醜の差を見せないと!

でないと、どんなに累が美しい顔を求めていたかという説得力に欠けるし、ニナが累と顔交換したあと、演劇界で名声を得ていく累を見て「顔も名声もすべてを乗っ取られるんじゃないか!」という恐怖が真に迫ってこないと思いました。

と、なんだかんだと書きましたが、この作品をきっかけに二人の女優が変わる可能性はあると思います。やっぱり清純派を貫こうと思うのか、もっともっとイメージを崩したいと思うのか。今後の土屋太鳳&芳根京子の作品に期待したいです。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

累 -かさね-
(2018年9月7日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:佐藤祐市
出演:土屋太鳳、芳根京子、横山裕、筒井真理子、生田智子、村井國夫、檀れい、浅野忠信ほか

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