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【本音レビュー】20代と50代のウィル・スミスが戦う!? 映画『ジェミニマン』のCG技術がリアルすぎて衝撃的です

2019年10月29日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはウィル・スミス主演のSFアクション大作『ジェミニマン』(2019年10月25日公開)です。大ヒットしたディズニー映画『アラジン』のジーニー役で芸達者ぶりを見せてくれたウィルが本作で臨むのは、伝説のスナイパー。そのスナイパーと敵対するのが、なんと主人公の若い頃のクローン。つまり50代と20代のウィルが登場するのです! では物語から。

【物語】

凄腕のスナイパーとして伝説の人物と言われるヘンリー(ウィル・スミス)は、政府から依頼された仕事を遂行中に命を狙われます。自分の行動のすべてを把握し、狙ってくる人物がいる……。ヘンリーが暗殺者を探っていくと、なんとその暗殺者は自分のクローン。それも20代の若きヘンリーなのでした。「いったい誰がこんなことを!」。ヘンリーは仲間とともに、自分を狙う組織の存在を突き止めようと行動にうつすのですが……。

【映像の魔術師と演技派のスター俳優が強力コンビ】

本作を演出したアン・リー監督は『ブロークバック・マウンテン』『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』でアカデミー賞監督賞を2回も受賞している巨匠です。革新的な映像を作り出す技術にも長けており、その素晴らしさは『ライフ・オブ・パイ~』のめくるめく3D映像で証明済。そして、今回『ジェミニマン』では、デジタルでひとりの人間を作り出すという、ものすごい映像マジックを見せてくれます。

種明かしすると、50代のヘンリーはリアルなウィル・スミス。20代のヘンリーは完全にCGで作り上げられた人物で、ウィル・スミスが演じた若きヘンリーをベースにしたデジタル・キャラクターなんです! 人間じゃなくてデジタル……もう信じられないですよ。生身の人間にしか見えませんでしたから。さすが巨匠、「不可能を可能にしちゃいましたね!」って感じです。そしてウィルも中年ヘンリーと若いヘンリーを演じ分ける技術が凄い。つまり本作は名匠と演技派がタッグを組んだ革新的な映像を見せる映画なのです。

【人間とクローンが親子になっていく?】

と、映像は本当に素晴らしいし、アクションも迫力あるのですが、個人的にはストーリーがちょっと物足りないというか……。ヘンリーがクローンである若いヘンリーと対峙したとき、ヘンリーは自分を殺そうとした彼を倒す余裕があったのに手を出さない。これまでの彼なら瞬殺しているのに……。自分と同じ顔の人物だから殺せなかったのかなと思ったら、なんと「本当は殺しなんてしたくないんだろう」とか言って、クローンの心を読んで、情けをかけてやるのです!

一方、若きヘンリーは「ジェミニ」という組織に属しており、ここのボスが黒幕で、クローンのヘンリーを生み出した人物。いわゆる生みの親なのですが、なんと若きヘンリーは中年ヘンリーに説得されたら、あっさりボスを裏切っちゃうんですよ。

そこからは人間とクローンが協力して黒幕を追い詰めていくのですが、合間に壮絶アクションがあるとはいえ、なんかいろいろトントン拍子。すごいアクションと映像マジックでグイグイ見せていくのは良いけれど、物語がスタンダードというか、正直「もうちょっとひねってほしかったな」というのが本音。よく言えば「心地よく楽しませてくれる映画」って感じでしょうか。

【革新的な映像表現を楽しむ映画】

映画『ジェミニマン』は、革新的な映像技術を細部にわたるまでチェックしながら観たり、新しい映像世界を求めている人向きの映画かもしれません。新しい映像体験をしたいって人は3D+ in HFR(イン・ハイ・フレーム・レート)という最先端の映像技術による超鮮明な3D上映を行っている劇場で観ましょう。ふたりのウィル・スミスの映像やバイクチェイスのシーンなど遊園地感覚でよりエキサイトできると思います。けっこう男子好きする映画なので、デートムービーにいいかもしれませんね!

執筆=斎藤 香 (C)Pouch

ジェミニマン
(2019年10月25日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:アン・リー
出演:ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クライブ・オーウェン、ベネディクト・ウォン
© 2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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