海外移住をする!と伝えると、ほぼ100%の高確率で返ってくる「英語はペラペラに話せるんだよね?」という反応。海外生活=英語が必須である……と、まるで「パスポートは持ってるよね?」なんてノリ。
私は30歳で仕事を辞めてアイルランドに留学しているのですが……実は英検凖2級レベルでした。
たしかに実際に住むとなると家探し、住民登録、仕事探し…などやるべきことは盛り沢山。これを母国語ではない言語でやるものだから、気になると思います。
英語の勉強は大学時代で止まったまま、海外で暮らすとどうなるのか……。
実際に私が2年弱、アイルランドに住んでみて感じた、英語が話せなくても「なんとかなった部分」と「なんとかならなかった部分」についてお話したいと思います。
【日常に忙殺されて進まない英語の勉強】
まず始めに、移住前の私の英語力はというと、出来るのは簡単なあいさつ程度。
英語の試験では赤点こそ回避していましたが、日常生活で英語を話す機会は全く無かったので、特に英語を話すことへの苦手意識がかなりありました。
「いつか海外で暮らしたい!」「英語がペラペラになりたい!」と思いながらも、日常生活に忙殺されていると勉強はおざなりに……。
【30歳で舞い込んだ留学のラストチャンス】
転機があったのは30歳も半ばを過ぎた2月、アイルランドが年2回公募している『ワーキングホリデービザ』に当選したことがきっかけでした。
そのビザは入国の期日が決まっていたことと、31歳以降は年齢制限のため再応募は出来ないこともあり「このタイミングを逃したら一生行けないかも……!」と、思い切って仕事を辞めて渡航することに。
しかし差し迫る渡航日を前に、参考書を買い込んだはいいもののほとんど手つかずのままでした。
【100%英語の環境に緊張の連続】
そんな不安な状態で迎えたアイルランドへの渡航日。
最初の試練は、飛行機の経由地であるモスクワの空港で訪れました。
成田空港を出た時は日本語の機内アナウンスもあったものの、モスクワに着くとロシア語と英語のみ。
搭乗ゲートが随時変わる状況の中、ところどころ聞き取れる単語で右往左往。その後のアイルランド入国審査、ホテルまでの移動……それまでひとり旅すらしたことがないのに、全て英語の環境で緊張の連続。
コンビニで水を買うのすら怖気づき「話しかけられたら何て返そう……」と考えながら、ずっと下を向いて歩いていました。
【完璧な英語を話さなくてもいい】
そんな緊張の糸が解れたのは、語学学校に通い始めたのがきっかけでした。
クラスメイトの出身地はブラジル、スペイン、フランス、イタリアなどさまざま。
私は間違えるのが恥ずかしくて、自信も無いので小さい声でぼそぼそと話していました。
いっぽう、クラスメイトの中には、文法や時制がめちゃくちゃでも、声の大きさと情熱で気持ちが伝わる人もいて「これで良いのか!」と雷に打たれたような衝撃がありました。
今まで英語ネイティブを含め色んな国の人と話してきましたが、どんなにつたない喋りだったとしても、非難されたり嫌なことを言われたことは一度もありません。
仕事や試験になってくるとハチャメチャな英語は通用しませんが、日常のコミュニケーションを取るには完璧な文章でなくても充分だと気付きました。
【しかし…「働く」となると話は別】
「じゃあ全然話せないレベルでも海外で暮らせるんだね!」と思いますよね?
でもそこには落とし穴があって、いま私が直面している試練がまさにそれ。
つたない英語力でも暮らせるものの、5年、10年と海外で暮らしていくためには意識的に英語を学ぶ必要があることを痛感しています。
当たり前だけど、ただ住んでいるだけでは英語力は全然伸びません。
実際、私は2年弱住んでいてもまだまだ言いたいこともスムーズに言えない英語力のままです。
以前、友人達と集まったとき、出身国の政治や情勢の話題に全く入ることが出来ずに、黙って時間が過ぎるのを耐えていたこともあります。
また、人生で初めて企業の面接を英語で受けたら撃沈……。
日本語だったらスムーズに自分の経歴を話せるのに、まず英語がネイティブ並みに出来ていないと能力を見てもらえないんだ……と悔しい思いをしました。
このことをきっかけに、長年逃げてきた英語勉強へようやく本腰を入れようと決意しました。
【実践しながら勉強することが必要】
理由をつけて英語から逃げていた私にとっては、話さないと生きていけない環境に飛び込むことは合っていたのだと思います。
でも実際に暮らしてみて思ったのは、英語が苦手でも何とかなるけれど、話せた方が現地生活での可能性が広がるということ。
仕事を取れるチャンスも増えるし、何より色んな国の人と共通言語として会話ができます。
日常で暮らす分には困らない英語力でも、海外で根を張って生きて行くには勉強は必要不可欠なもの。
アラサーの戦いはまだまだ始まったばかり……!
執筆・撮影:香月実穂
Photo:(c)Pouch