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【本音レビュー】ニコラス・ケイジがふんどし姿に! 園子温ワールドをハリウッドで爆発させた映画『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』

2021年10月12日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、日本映画界の鬼才・園子温監督のハリウッドデビュー作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(2021年10月8日公開)です。

園監督といえば『愛のむきだし』、染谷翔太&二階堂ふみ主演の『ヒミズ』、埼玉愛犬家連続殺人をベースにした『冷たい熱帯魚』など、濃厚な人間ドラマや強烈なバイオレンスを描いているイメージ。

でも実はずっとハリウッドで映画を撮ることを目標にしてきたそう。本作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』は念願が叶ったハリウッドデビュー作なのです!

試写で観させていただきましたが、個性的なキャラが続々登場する映画で面白かったですよ。では物語から。

【物語】

悪名高き銀行強盗のヒーロー(ニコラス・ケイジ)は相棒のサイコ(ニック・カサヴェテス)とともにサムライタウンの銀行を襲いますが、少年(潤浩)が差し出したガムボールをきっかけに捕らえられてしまいます。

しかし、サムライタウンを牛耳るガバナー(ビル・モーズリー)が、タウンを脱走した、自分のお気に入りのバーニス(ソフィア・ブテラ)を連れ戻すことを条件にヒーローを解放。

ところが、ミッションに失敗すると爆発するライダースーツを着させられたヒーロー。彼は命がけでバーニスが逃げ込んだゴーストランドに入り込むのですが……。

【不条理でハチャメチャなサムライウエスタン映画】

社会を震撼させた事件をベースにした『冷たい熱帯魚』『恋の罪』のような、犯罪とエロスとバイオレンスが錯綜する強烈な園監督作とは一線を画し、本作は“大人の遊園地”みたいなにぎやかなバイオレンス映画でした!

主演のニコラス・ケイジは園監督の大ファンで「何でもやる!」という心意気だったのか、フンドシ一丁姿を披露したり、ママチャリに乗ったり、スーツの爆発に戦々恐々となったり……。

私がニコラス・ケイジの主演作を見るのが久々だったせいか「ニコラス・ケイジ満喫!」な気持ちになりました。やはり華があるし、彼が出ているだけでユーモアと狂気が成立するんですよね。

【外国人の頭の中のジャパン】

サムライタウンはまさに時代劇の趣。遊郭らしき世界が展開されているのですが、そこのボスは白いスーツのアメリカ人だし、スマホや車も登場。

もはや何時代がわからないパラレルワールドですよ。ヴィジュアルが、海外の人が思い描く勘違いジャパンそのものなのです。

園監督は「私たちは馬鹿げた世界に生きている。このサムライウエスタン映画に、私たちが感じる不条理を散りばめています」(公式インタビュー)と語っています。

よく考えてみれば、私たちが生きている世界も和洋折衷していますからね。極端に振り切っているとはいえ、この映画の世界観、ハチャメチャに見えて、あながち嘘じゃないのかもと思いました。

【ハリウッド映画だけど、描く世界は園ワールド】

ハリウッド映画ですが、ロケ地は日本だし、日本人俳優も多く出演しているので、ハリウッド的な雰囲気はあまり感じられないかもしれませんが、それはきっと園監督作だから。

やはり人間の闇をむき出しにする独特の世界観は、日本のメジャー映画とも一線を画していますが、ハリウッドでもそれは同じ。

迎合しない、流されない強固な園ワールドは、おそらく世界のどこで映画を撮っても変わらないんじゃないでしょうか。

なんと、すでに次回作の準備に入っている園監督。次は完全ハリウッドで撮影する映画になるかも!

まずは『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』を楽しみましょう。

執筆:斎藤 香(c)Pouch

プリズナーズ・オブ・ゴーストランド
(2021年10月8日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:園子温
出演:ニコラス・ケイジ、ソフィア・ブテラ、ビル・モーズリー、ニック・カサヴェテス、TAK∴、中屋柚香、YOUNG DAIS、古藤ロレナ、縄田カノン、栗原類、渡辺哲ほか
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