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池松壮亮&伊藤沙莉共演『ちょっと思い出しただけ』 / 時間を遡って描かれる不器用な恋愛模様に共感

2022年2月11日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、池松壮亮さんと伊藤沙莉さんW主演のラブストーリー『ちょっと思い出しただけ』(2021年2月11日公開)です。

かつて恋人同士だった舞台の照明スタッフの青年とタクシードライバーの女性の恋を、別れから出会いまでを思い出す形で逆行して描いていく作品です。構成はひねっているけど、ラブストーリーとしてはド直球! 共感度は高い!

では物語からいってみましょう。

【物語】

照生(池松壮亮)は、舞台照明のスタッフ。34歳の誕生日を迎えたその日もダンサーを照らしていました。

いっぽう、タクシードライバーの葉(伊藤沙莉)は、ひょんなことからタクシーを降りたときに聞こえてきた音に、吸い寄せられるように劇場へ。すると、誰もいないステージで照生が踊っていました。

そして、1年前、更に1年前と、別れてしまった元恋人同士の時間を遡っていくのです。

【出会いから別れを遡ってみると…】

まず率直な感想を言いますと、めちゃくちゃ面白かったです。というか、共感度が高い作品ですね。

昨年、大ヒットした『花束みたいな恋をした』同様に、フツーの恋人同士の恋愛映画なのですが、別れから出会った頃へと遡っていきます。なので、気持ちがすれ違っていくポイントが、けっこう明確に見えるんです。

おそらく女性は伊藤沙莉さん演じた葉の気持ちがわかるし、男性は池松壮亮さんが演じた照生の気持ちがわかるのではないでしょうか。別れたあとに2人が選んだ人生も、男女の違いがよく現れているなぁと思いました。

【優柔不断な照生とはっきりしたいタイプの葉】

実は、照生には足を怪我してダンスを断念した過去が。舞台の照明スタッフをやっているのは、セカンドキャリアとして選んだ道なわけです。

なので、葉はお付き合いしているとき、照生を支える気持ちでいっぱい。

しかし、怪我でキャリアを閉ざされた照生は、自分を見つめる時間を持ちたくなり、葉との連絡を疎遠にしてしまうんです。1人で考えたい気持ちもわかるけど、なぜそれを葉に伝えないのかと。彼女は連絡がとれないことに、ずっと悲しみや苛立ちを抱えていたのに。

でも時間が2人の出会いまで遡っていくと、わかるんです。照生は最初からそういう人だったことが。

【両想いから始まった恋だけど】

2人がお互いに好感を持ち、友達から恋人へと関係を発展させていきますが、ちゃんと付き合おうという言葉のやりとりはなかったような気がします。

2人が、水族館に行くシーンで葉が「私たちの関係は?」と照生に尋ねるシーンがあるのですが、はっきり言わないんですよね。それでも一緒に暮らしたり、猫を飼い始めたりするので、どこから見てもラブラブな恋人なのですが。

時は流れ、いろいろなすれ違いが生じ、葉が「はっきり言わなくちゃわからないよ!」と言うシーンを観たとき、「そうそう!」と思い切りうなずいてしまいました。

彼は肝心なことを言葉にしないタイプの人。言わなくてもわかるだろう、察してほしいというタイプなのかも……。

【別れたあとの二人】

この映画のタイトル『ちょっと思い出しただけ』は、別々な人生を送ることになった男女が、過去の恋愛を振り返るという映画の内容に合っていて、いいタイトルだなあと思いました。

また、葉は過去の恋愛を「ちょっと思い出す」くらいですが、意外と照生はまだ葉に未練があるのかなと…思ったりして。

なぜなら、照生は葉にプレゼントされたある物を大切にしているんです。

彼は葉といたとき、幸せだったんだろうな~、あのときちゃんと話していればとか、こうしていればとか、第三者である観客の自分が照生にちょっと喝を入れたくなりました。

とても素敵で共感度の高い恋愛映画。主演の池松さん、伊藤さんも素晴らしいので、注目していただきたいです。

執筆:斎藤 香(c)Pouch

『ちょっと思い出しただけ』
(2022年2月11日(金・祝)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:松居大悟
出演:池松壮亮、伊藤沙莉、河合優実、大関れいか、屋敷裕政(ニューヨーク)、尾崎世界観、市川実和子、國村隼(友情出演)、永瀬正敏
©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

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