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【映画批評】見世物小屋に獣人ショー、読心術…『ナイトメア・アリー』は1歩足を踏み入れたら戻れない美醜入り乱れた独特の映画

2022年3月25日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのはギレルモ・デル・トロ監督の最新作『ナイトメア・アリー』(2022年3月25日公開)です。『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞作品賞、監督賞などを受賞したデル・トロ監督。巨匠になっても一貫して、妖しくてヤバくて美しい世界を描いています。

本作もかなりエグい大人のミステリー。何しろ冒頭の舞台はサーカスの見世物小屋ですから……。では物語から。

【物語】

ワケあって流れ者になったスタントン(ブラッドリー・クーパーさん)。サーカスの「獣人ショー」を見て「これは人間か獣か!」と衝撃を受け、そのサーカスで働き始めるのです。そこで出会った読心術師のジーナ(トニ・コレットさん)に気に入られ、読心術の秘密を教えてもらいます。

彼は読心術のスキルを得て、好意を持っていたモリー(ルーニー・マーラさん)とともに、一流ホテルで読心術ショーを開催するほど成功しますが、心理学博士のリリス(ケイト・ブランシェットさん)がスタントンに近づいてきて……。

【怖い物見たさ感満載! 美醜入り乱れた独特の世界】

1940年代前後が舞台なので、クラシックな雰囲気が漂い、余計に非現実感がたっぷり……面白かったですね~!

特にサーカスの見世物小屋は、怖いもの見たさ感が満載でドキドキしました。「獣みたいな人間」ってどんな人なの? と思うじゃないですか。でも実際はその見た目よりも、彼が置かれている環境にゾっとしました……。

【野心をむき出しにして人生が暗転…】

でも1番の見どころは、主人公スタントンが辿る運命でしょう。人生崖っぷち状態でサーカスに紛れ込んだスタントンは、イケメンなもんだから、運のいいことに読心術の女性に気に入られ、そのときからスタントンの運命に光が差します。

好意を抱いている女性モリーを口説き落とし、一流ホテルで開催する読心術ショーで成り上がっていくのです。

Rooney Mara and Bradley Cooper in the film NIGHTMARE ALLEY. Photo by Kerry Hayes. © 2021 20th Century Studios All Rights Reserved

まさに「俺の人生イケイケ」とばかりにドヤ顔で読心術ショーをするスタントン。でも、ドン底生活からやっと這い上がった彼は現状に満足せず「もっと成功を」と野心をむき出しにしてしまう。

やはり、そういうときに足元をすくわれるんですね……。

心理学博士のリリスが登場してから、スタントンの人生は揺れに揺れます。彼女はスタントンに隙があることを見抜いていたからです。

【人生の皮肉を強烈に描いたラスト!】

リリスとスタントンのやりとりはぜひ映画を見ていただきたいのですが、スタントンは、リリスの罠にからめとられるように落ちていく……。

そして、彼が自分の人生を振り返り自身の愚かさに気づくのは、ラスト。かなり強烈な展開で「なんという人生の皮肉!」と背筋がゾっとしました

ちなみに主要キャストは演技派オールスターがズラリ。リリス役のケイト・ブランシェットさんは、クラシック女優の雰囲気で素敵でしたし、主演のブラッドリー・クーパーさんもドンピシャのはまり役。最後の見せ場は圧巻です!

美しく妖しい世界を観たい人やクラシック映画のような雰囲気が好きな人にもオススメ。ぜひ、大人の人生ミステリーにハマってください。

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

『ナイトメア・アリー』
(2022年3月25日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ルーニー・マーラ、ロン・パールマン、メアリー・スティーンバージェン、デヴィッド・ストラザーンほか
(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

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