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冒頭からグイグイ惹き込まれる杉咲花主演映画『朽ちないサクラ』安田顕&豊原功補のいぶし銀の魅力にも注目です

2024年6月20日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、杉咲花さん主演映画『朽ちないサクラ』(2024年6月21日公開)です。柚月裕子の同名小説の映画化作品。ドラマ『アンメット』(フジテレビ)の演技も好評の杉咲花さんが、親友の死を巡る謎に迫っていくクライムサスペンスです。

では、物語から。

【物語】

愛知県平井市在住の女子大生がストーカー男に殺害されました。女子大生は平井中央署の生活安全課に被害届を出していましたが、中央署は受理を先延ばしにしており、その間に慰安旅行に行っていたことが新聞に独占スクープされてしまうのです。

県警の広報広聴課の森口泉(杉咲花さん)は、慰安旅行の件を新聞社に勤務する親友に話したため、彼女が記事を書いたのでは?と疑います。しかし、親友は無実を訴え「証明するから」と調査を開始するも、変死体で発見され……。

【冒頭からグイグイと惹き込まれる】

冒頭からストーカー殺人の恐ろしい現場が描かれ、被害者の発見、犯人逮捕、県警の慰安旅行のスクープと、畳み掛ける演出がすごいです! 始まってから10分も経たないうちにこの事件が本作の出発点であり、鍵になることがわかります。

杉咲花さん演じるヒロインの森口泉は捜査につく仕事ではないのですが、慰安旅行のスクープを出した新聞社に勤める親友が殺されたことから、この事件の謎を解き明かしたいと思うようになります。

「自分が疑ったから、彼女は殺された」という罪悪感が彼女を動かし、その行動はやがて、ストーカー事件と泉の親友の殺人事件が繋がっていることを明らかにしていくのです!

【殺人事件がヒロインの人生を変える】

泉が独自に調査に動き出し、事件の真相に近づいていくプロセスにはハラハラします。

親友が殺されたきっかけを作ってしまったと思い込んでいる泉ですが、いちばんの悪は殺人犯であり、泉ではない。でも彼女がそう思ってしまう気持ちもわからなくはないので、彼女が刑事でもないのに事件に関わっていこうとする姿は応援したくなるし、犯人を見つけ出して欲しいと思わずにいられない。

事件をきっかけに人生が大きく変わっていく泉。いきなり調査に乗り出すなどやることは大胆ですが、杉咲さんは泉の心の変化を丁寧に積み重ねていくように見せていきます。だから唐突な感じはしないし、自然とヒロインの感情に乗っていけるんですよね。

実に共感度の高いヒロインでした。

【いぶし銀の魅力炸裂の俳優陣】

元公安で泉の上司・富樫を演じる安田顕さんと、県警捜査一課の梶山刑事を演じる豊原功補さんもすごくよかった

本作の安田さんはコミカルな面を封印。笑顔を見せずに最後まで含みを持たせて、謎めいた男を貫いています。

冨樫は泉の行動を見守りつつ、自身の抱える過去と向き合っていくのですが、どこかミステリアスで掴みどころがない男。いい上司なのか、何か企んでいるのかわからない感じに惹きつけられるんです。

そして梶山刑事を演じる豊原さんは、この映画のスパイス的な存在。なんでも顔と態度に出ちゃうし、厳しい言葉を泉に投げかける荒っぽい男ですが、本気でぶつかってくる相手には手を差し伸べる優しさもある男。「味方につけたら心強いな〜」と思える器の大きさがカッコよかったです。

事件がどう転んでいくのかは映画を見ていただきたいのですが、その真相は「え!」と驚くべきもので、背筋が凍りましたよ。ぜひスクリーンで、ヒロインの泉と一緒に、この謎めいた事件の解決を見届けてください。

執筆:斎藤 香(c)Pouch

朽ちないサクラ
(2024年6月21日より全国ロードショー)
原作:柚月裕子「朽ちないサクラ」(徳間文庫)
監督:原廣利
出演:杉咲花
萩原利久 森田想 坂東⺒之助
駿河太郎 遠藤雄弥 和田聰宏 藤田朋子
豊原功補
安田顕
©2024 映画「朽ちないサクラ」製作委員会

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