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心がポカポカになる感動作『アイミタガイ』 親友の死が受け入れられない主人公を演じる黒木華に注目!

2024年11月1日

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、黒木華主演映画『アイミタガイ』(2024年11月1日公開)です。

“アイミタガイ”(相身互い)とは、誰かを思ってしたことは、巡り巡って誰かを救い、やがてそれが自分に返ってくるという意味。試写で鑑賞したのですが、これがとっても心温まる素敵な作品だったんですよ〜。

では、物語から。

【物語】

ウェディングプランナーの梓(黒木華さん)とフォトグラファーの叶海(かなみ / 藤間爽子さん)は、中学からの親友。梓は会うたびに叶海に愚痴をこぼし、彼女に励まされてきました。しかし、叶海は撮影で行った海外で事故死してしまいます。

叶海の両親(田口トモロヲさん、西田尚美さん)は四十九日を終えても、遺品の整理ができずにいました。そんなとき、叶海の携帯電話にたくさんのメッセージが残っているのを発見。それは梓からのメールだったのです。

【親友の死が受け入れられない】

なんでも語り合っていた親友を失った梓ですが、メソメソすることなく、これまで通りの生活を送っているように見えました。でもそれは表向きの姿。実は彼女は親友の死を受け入れられず、その日にあったことや自分の気持ちなどをメールに綴り、送り続けていたのです。

本当に大切な人を失うと、悲しみよりも、信じたくない気持ちの方が強くなるのかもしれません。梓がメールを送り続けることがその証拠。彼女は返信が来ないと知りながらも、ずっと叶海の言葉を求めていたのです。

【悲しみの共有が心を落ち着かせる】

でも、自分の気持ちをわかってくれる人が存在することで、悲しみで曇っていた心に光が射すこともあるということを本作は語っていると思いました。

梓が毎日送っていたメールを見た叶海のお母さんが「この子は私たちと同じ。叶海が亡くなったことを受け入れていないのよ」と語るのですが、娘をずっと思ってくれる人がほかにもいると知ることは、親にとってうれしいことだと思うんです。

このあと、叶海が生前、児童養護施設の子どもたちと交流してきたエピソードなども描かれ、これもまたいい話で……。

叶海は前半で亡くなってしまうけれど、物語の中でずーっと存在しているように感じました。叶海の存在が、梓と叶海の両親をつなげていくし、梓の人生を変化させていく。やさしさが次々と伝わっていく様子は、とても温かい気持ちに。

これが “アイミタガイ” なんですね!

【悪い人が出てこない幸福な映画】

最後まで見るとわかるのですが、本作はトラブルを起こすような悪い人がまったく出て来ないんです。

観客を物語に引き込むために主人公を追い込んだりせず、梓が叶海の死を乗り越えていく様を周囲の人々とのあったかエピソードを積み重ねて丁寧に見せていきます。

梓と恋人の澄人(中村蒼さん)との関係もいいんですよね〜。梓と結婚したい澄人ですが、両親が離婚しているために結婚に消極的な梓。そんな彼女の気持ちを受け入れ、見守りながら側にいる澄人……いい男じゃないですか〜。

登場人物たちそれぞれの人生を細やかに綴った脚本、一人ひとりの個性を丁寧に引き立てていく演出、そして俳優たちが全員素晴らしい!

特に主演・黒木華さんの安定感が梓のリアリティと共感を生み出していると感じました。

寒くなってきましたからね、『アイミタガイ』で心をポカポカにして、やさしい気持ちに浸ってください!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:© 2024「アイミタガイ」製作委員会

アイミタガイ
2024年11月1日(金)より全国ロードショー
原作:中條てい「アイミタガイ」(幻冬舎文庫)
監督:草野翔吾
脚本:市井昌秀 佐々部清 草野翔吾
出演:黒木華 中村蒼 藤間爽子 安藤玉恵 近藤華 白鳥玉季 吉岡睦雄 / 松本利夫(EXILE) 升毅 / 西田尚美 田口トモロヲ
風吹ジュン/草笛光子

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