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『ザ・タウン』監督ベン・アフレックの極端な逆転人生とは [最新シネマ批評]

2011年2月4日

[公開直前☆最新シネマ批評]
毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。本日は、明日公開の映画「ザ・タウン」をご紹介します。

今回ピックアップするのは、監督としてメキメキ頭角を現してきたベン・アフレック監督&出演の映画『ザ・タウン』。

2007年『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(未公開・DVD)で初監督ながら同年の各映画賞レースを席巻したベン・アフレック監督。監督第2作目となる本作でも、ボストンのスラム街で活動する銀行強盗たちの、スラムから抜け出せない苛立ちや孤独をサスペンスフルに描いて、東京国際映画祭でも大絶賛! いまや「第二のクリント・イーストウッド!」という声まで上がっています。

そもそも彼のデビューは鮮烈でした。親友マット・デイモンと共演し共同脚本を担当した『グッド・ウィル・ハンティング・旅立ち』で、なんとアカデミー賞最優秀脚本賞を受賞! いきなりオスカー受賞者となったのです。

その後も『アルマゲドン』『恋に落ちたシェイクスピア』など役者として話題作に出演。ところが、『ジーリ』で共演したジェニファー・ロペスと恋人関係になってからというものキャリアに暗雲がかかり始めたのです。

交際をオープンにして、いつも堂々とイチャイチャする有様。女王のようなジェニファーに宝石をちりばめた便器をプレゼントするなど、バカップルの王道を登りつめ、肝心の出演作もパっとしない。このまま消えてしまうのではないかと誰もが思い始めた頃、なんと奇跡が起こりました!

06年サスペンスドラマ『ハリウッドランド』の好演が評価されて、わずかですが上昇したのです。そして初監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』が大絶賛されてからというものキャリアは上昇カーブを描き、バカップル男優から知的スターにと変身を遂げたのでした。

正直、こんなにも極端に華麗なる復活をする人は珍しい! 

2月27日発表のアカデミー賞で『ザ・タウン』は、作品や監督賞は候補漏れしたものの、エキセントリックな主人公の幼馴染を熱演したジェレミー・レナーが助演男優賞候補に。『ゴーン・ベイビー・ゴーン』でもエイミー・ライアンを助演女優賞候補に送りこんだアフレック監督。

つまりは役者を演出する手腕が認められたということですから、たいしたもんです。もう、宝石入り便器をプレゼントした過去は葬ってもいいかも。『ザ・タウン』を見ればベン・アフレックの第二の人生にきっと拍手を贈りたくなりますよ。(映画ライター/ 斎藤香)



『ザ・タウン』
2011年2月5日(土) 丸の内ルーブル、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック、ジェレミー・レナー、レベッカ・ホール、ブレイク・ライブリー、ジョン・ハムほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:www.thetownmovie.jp
(C) 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES

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斎藤香 映画誌の編集者を経て、フリーのエディター&ライターに。好きな映画はシニカルなコメディとミステリー系。好きな監督はウディ・アレン。

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