[公開直前☆最新シネマ批評]
毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。本日は映画「英国王のスピーチ」です。
2月28日(日本時間)に発表される第83回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞など、主要部門含め12部門という最多候補となっている『英国王のスピーチ』。今回は、『ソーシャル・ネットワーク』とアカデミー賞主要部門を争うであろう本作をピックアップ!
吃音に悩むジョージ6世(コリン・ファース)が、妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)が探して来た言語聴覚士のライオネル(ジェフリー・ラッシュ)とともに吃音を克服し、第二次世界大戦の混乱の中、スピーチによって国民を励ます英国王となるまでを描いた本作。
ベースは、ジョージ6世の言語聴覚士だったライオネル・ローグの記録ですが、このジョージ6世の吃音克服エピソードをどうしても映画化したい人物がいました。本作の脚本家であるデヴィッド・サイドラーです。
サイドラーの本作への並々ならぬ情熱の源は、彼自身の過去にありました。サイドラーは幼少時代、第二次世界大戦で受けた精神的ストレスがきっかけで吃音に苦しんだのです。そんな彼を励ましたのは、本作の主人公でもある英国王ジョージ6世! 吃音を克服し、第二次世界大戦直前から、ラジオ放送で国民を励ますスピーチを続けた英国王。
その放送を聞いて育ったサイドラーにとってジョージ6世は希望をくれた恩人。「いつかきっと彼のことを書きたい!」。そんな想いを70年間温めていたサイドラー。映画『英国王のスピーチ』は、サイドラーのジョージ6世へのリスペクトと感謝の気持ちをこめた夢の実現でもあるのです。
もうひとり、本作の製作に一役買ったのは、なんとトム・フーパー監督の母。オーストラリア人である彼の母は、友人の誘いで『英国王のスピーチ』の台本を読む朗読会に出かけ、この物語を知りました。そして息子であるフーパー監督に電話をしてこう言ったそうです。「あなたの次回作を見つけたわよ!」
脚本家の長年に渡る情熱と監督の母のひらめきがひとつになって誕生した『英国王のスピーチ』。ちなみにウィリアム王子の結婚式間近で大忙しであろう英国王室の反応ですが、エリザベス女王は当初、父であるジョージ6世の映画は見ないと言っていたそうです。ところが、素晴らしい出来栄えで社会現象にもなりつつある作品を無視できなかったのか、鑑賞したとのこと。
エリザベス女王の物語『クイーン』で女王を演じたヘレン・ミレンはエリザベス女王にランチに招かれたそうなので、コリンが女王にランチに招かれれば「気にいりました」のサイン!? アカデミー賞の行方もロイヤルファミリーの反応もちょっと気になりますね。(映画ライター:斎藤 香)
『英国王のスピーチ』
2011年2月26日(土)TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国公開
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース/ジェフリー・ラッシュ/ヘレナ・ボナム=カーター
配給:ギャガ株式会社
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ライタープロフィール:http://bit.ly/hlZYAr