[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今週のピックアップは、明日13日より公開の伝説のミュージシャン、ジョン・レノンのドキュメンタリー『ジョン・レノン,ニューヨーク』。生誕70周年、没後30周年の2010年に製作された本作は、彼が愛してやまなかった街、ニューヨークでの日々を綴った作品です。
オノ・ヨーコとの出会いをきっかけにビートルズの世界から大きく飛躍しようとしていたジョン。ビートルズ解散後、平和活動、反戦運動に没頭し、ヨーコをバッシングする英国に怒りを爆発させて米国に渡ったけれど……。そんな彼の身に起こった出来事とは?
彼に近い人物たち、オノ・ヨーコやカメラマン、プロデューサーらが、ニューヨークでのジョンのエピソードを語り、記録写真と秘蔵映像、初公開音源でジョン・レノンが蘇ります。
それにしても驚くべきは、ヨーコのジョンへの多大な影響力です。一心同体といっても過言ではないくらい共に生きていたジョンとヨーコ。「お互い依存しすぎていた」と語り、一度は別居するけれど、やっぱりヨーコの元に戻るジョン。マザコンだったとの噂もあるジョンは、ヨーコの中に母の面影を見ていたのでしょうか。
ショーンが生まれてからのジョンは、若き日のとんがったイメージとは別人。とても穏やかな顔で息子ショーンの育児に没頭。ビジネスはヨーコが仕切り、ジョンは専業主夫に。そうです、ジョンは元祖イクメンだったのです。「この頃は音楽とは離れて、何も見ず何も聞かなかった。聞くのはイージーリスニングだけ」というジョン。一生懸命ショーンの面倒をみるやさしいパパの顔が映されるホームムービーは圧巻! また最初の妻との子ども、ジュリアンのことを語るジョンの息子を思う父の気持ちは本当に普通の父さんで何やらジーンとしてしまいます。
専業主夫から再びミュージシャンに戻ったジョンが作った曲「スターティング・オーヴァー」「ウーマン」。あのやさしい歌声は、愛に満ち溢れた幸せなジョン・レノンそのものだったのだな~と、ちょっと泣きそうになりますよ。そしてあの銃弾に倒れた最後の日がやってくるのですが、わかっていても「やめて!」と思わずにいられません。当時の音楽界、家族のショックは映像からもしっかり伝わり、見ている方も胸が痛くなります。
特筆すべきゲストはエルトン・ジョン。ド・ピンクのサングラスでインタビューに答えるエルトンは、ジョン・レノンと同じステージに立ったときの思い出を語ります。胸毛もあらわにしたトンデモファッションをしていた若き日のエルトンとジョン・レノンのツーショットは貴重。エルトンはしゃべりもチャーミングな人でしたよ。
偉大なるジョン・レノンのニューヨークでの足跡。熱い9年間はジョンのファンはもちろん、音楽ファンは必見です!
(映画ライター=斎藤香)
『ジョン・レノン,ニューヨーク』
2011年8月13日、東京都写真美術館ホールほか全国順次公開
監督: マイケル・エプスタイン
出演: ジョン・レノン (アーカイヴ映像)、オノ・ヨーコ 、エルトン・ジョン
製作総指揮: スタンリー・バックタール、マイケル・コール、スーザン・レイシー
脚本: マイケル・エプスタイン
特別協力: オノ・ヨーコ
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