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台湾映画『台北カフェ・ストーリー』が描く物々交換が断捨離ブームに渇を入れる!?【最新シネマ批評】

2012年4月13日


[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは明日14日より公開の台湾映画『台北カフェ・ストーリー』です。台湾映画界の巨匠ホウ・シャオシェン監督が製作総指揮をした作品で、ヒロインは伝説の台湾映画『藍色夏恋』のグイ・ルンメイ。『藍色夏恋』の頃から美少女だった彼女ですが、期待を裏切らずに美しく成長し、スクリーンを彩っております。また歌手の中孝介が特別出演。カフェ内で美声を披露しています。

舞台は美人姉妹がオープンしたカフェ。なかなかお客が入らず、妹はカフェ内での物々交換を提案します。物々交換をするために来店したお客がコーヒーとケーキを注文するかもしれないからです。姉は反対しますが、その影響でカフェは繁盛していきます。そして、お客さんのひとりの男性が、世界を回って集めた35カ国の石鹸とお土産話しを何か特別な物と交換したいと言ってきて……。

カフェを成功させたい、素敵なティーカップを揃えたい、車を買い替えたい……と、お金を稼ぐという普通のビジネスを考えていた姉妹が、物々交換をきっかけに物の価値を考え直し、自分にとって大切な物やことを考えるようになります。自分の目にはガラクタに見える物でも、人にとっては「宝物なの」ということもありますよね。物の価値は人によって違うし、見えないけれど価値ある物もあるわけです。思い出とか恋心とか歌とか……。

本作は東京国際映画祭アジアの風で上映され、高評価だった作品。監督はホウ・シャオシェン作『フラワーズ・オブ・シャンハイ』のとき助監督を務めたシアオ・ヤーチュアン。カフェ店内の雰囲気や香り高いコーヒーや美味しそうなスイーツ、美しい世界の石鹸やヒロインが描く絵などの映像のセンスは、ちょっと荻上直子監督の『かもめ食堂』を彷彿させます。

監督は「人の心理的価値は映像化が難しいけれど、物々交換なら表現できるのでは」と、カフェと姉妹のストーリーに物々交換のアイデアを盛り込んだそうです。

おもしろいのは物々交換カフェだけではありません。劇中、台湾の街ゆく人に「あなたなら世界旅行と勉強、どちらを選ぶ?」など、物語に関係する価値観を問うQ&Aをして、姉妹と一般の人々の価値観をスクリーンで自然にリンクさせているのです。

映画を見ながら「自分なら……」とついつい考えてしまいます。記者も考えましたよ。「世界旅行でしょう!」と思いつつ、台湾のティーンの「世界旅行は年とってからでもできるけど勉強はいましかない」とのコメントに「なるほど~若い人はそうよね」なんてうなずいたりして……。

ちなみに映画の舞台となっている「Daughter’s Cafe」は、この映画のために作られたセットなのですが、撮影終了後も残しそのまま営業しているそうです。なんと大繁盛! ヤーチュアン監督によると「姉妹がいると思って来る人もいるみたいです。姉はどこに? と聞かれたら、世界旅行に出ていますと説明しているようです」と。なかなかイキな対応を!

人によって違う価値観の相違を認めることで、それぞれの心に思いやりとか物の大切さ、ありがたみが芽生え、思い出や夢などが心に広がっていく。小さなカフェの物語なのに、心に大きなプレゼントをもらったような気持ちにさせてくれる『台北カフェ・ストーリー』。

音楽も映像もオシャレで心地よいけれど、人によって異なる物の大切さを描き、断捨離ブームに一石を投じそう(!?)意外とツワモノ映画かもしれません。

(映画ライター=斎藤 香


『台北カフェ・ストーリー』
4月14日より、シネマート六本木でロードショー
監督&脚本: シアオ・ヤーチュアン
製作総指揮: ホウ・シャオシェン
出演: グイ・ルンメイ、リン・チェンシー、チャン・ハン、中孝介
公式サイト:http://www.taipeicafe.net/
(C) 台北カフェ・ストーリー

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