フグって……美味しいものだとばかり思っていたら、実は可愛いんですね。見た目はもちろん、触るとぷよぷよで、ふわふわで……。私(記者)は黒点フグの大ファンになってしまったのです。
沖縄・西表島から船で10分程のところにある、サンゴでできた島・バラス島でシュノーケルをしていたときのことです。私は泳ぐのが苦手なうえにシュノーケルも初心者。インストラクターの指導の元でおっかなびっくりではありましたが、なんとか海の散歩を楽しんでいました。
夢中になって海中をのぞいていると、グングンと海底に向かって泳いでいく一人の人の姿が。すごいなあ〜、あんなに自由に泳げたらどんなに気持ちが良いんだろう。なんて思っていると、次の瞬間、その人は何か丸いものを手に持っているではないですか! “ なにアレー!!! ”
そのときは、なんか “丸っこい” ということだけしかわからなかったのですが、またまた次の瞬間、その人は他人である私に、その物体を手渡してくれたのです。フニャッとした手触りにギョッとしつつ、物体の正体を確かめると……。
そう、正体はフグ(あとから知りましたが「黒点フグ」というそうです)!! ひ、ひぃ〜。フグの毒とか、カラダは触っても平気なの!? フグへの知識のなさにやや焦りましたが、とりあえず触れる程度なら無害らしいことがわかり、せっかくなので珍しい感触を堪能することに。
手のなかで、ぷくーっとまん丸にふくれて威嚇するフグちゃん。威嚇のためのプクーッ! なのに、まさに “激おこぷんぷん丸” 状態で、めっちゃかわえぇ。そして、かなり大人しい(本人は逃れようと必死だったようですが、まったくその努力が伝わってこない)。手のなかで、ジーッとしながら解放されるのを待っているのみ。
触り心地は、とても柔らかくてポヨポヨしててフニャっとしてて。あぁ、ほんと、可愛すぎる。威嚇しているはずが、人間にこんなにも可愛いと思わせてしまうとは、なんという意味不明な生物なんだ!
ずっと一緒にいたいけど、そろそろお別れしなくては。放してあげると、海底に向かってこれまたゆっくりと下降していき、丁度いいサンゴの洞穴を見つけると130度程方向転換してピューッと入っていきましたわ。フグにしては、よっぽど急いでいたのが伺えます。
泳ぎがトロくて、すぐに人間に捕獲されてしまうという黒点フグ。体内には強い毒をしっかり持っていながら、生きているうちに敵に仕返しができないという黒点フグの生態の不思議に思いを馳せるのでした。
(写真、文=メル凛子)